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夜の随想

1 :名前はいらない:05/03/07 02:43:44 ID:4JON5uYO
つれづれなるままに。実はあんまり遅くなるといけません。
一応sage進行を希望します。

2 :名前はいらない:05/03/07 02:54:26 ID:4JON5uYO
聴こえない耳に届かせるために、
まずはその人を横たえたい。
ひいては日々の暮らしのために。
はじめに即死回避のために。

3 :名前はいらない:05/03/07 02:54:28 ID:sdieiPvs
夜はいいね。

4 :名前はいらない:05/03/07 02:57:55 ID:4JON5uYO
>3
はい、その通りだと思います。
季節によって違った趣を見せてくれます。
一人で居ると怖くなったりしたのは、随分昔のことです。

5 :名前はいらない:05/03/07 03:03:17 ID:4JON5uYO
タイトルに関する話をちょっとしておくと、初めは夜の思想、とするつもりだった。
しかし「思想」の意味を辞書で調べると、怖くなった。
私は秩序立った考えや、まとまりのある体系的な思考内容などとは無縁だと思うからだ。
私は怖気をふるいました。
だから、力なく「随想」なんて言う遠慮がちなタイトルとしたのです。

6 :名前はいらない:05/03/07 03:13:57 ID:4JON5uYO
dat落ちが怖いけど、明日に差し支えるので眠る事にします。書いとけ、書いとけ。

7 :.:05/03/07 03:55:10 ID:9YMnsbfA

夜は暗くて怖いの
星は消えそうでさびしいの
月は冷たくて寒いの

でも本当のわたしは
夜しか生きられないの



8 :アカリ:05/03/07 04:43:39 ID:Vu4QwF9/
細胞の一つ一つが膨らんでは縮む
肺胞のすみずみまで酸素を浸透させる
血中アドレナリン濃度、上昇
なぜか音がよく響くわ
バスドラに合わせて
からだをくねらす
アルコールが血管にいきわたる

9 :名前はいらない:05/03/08 01:28:38 ID:DZ0sISGt
評価とか出来るわけじゃないけれど。

>7
本当のあなたについての好奇心を刺激されましたけれど同時に、それを
語ってしまうのは禁忌じみたことなのだなとも。孤独な感じがします。

>8
こう言った享楽は退廃的な感じがするのですが、個人的にはいいなあと
思ったりしてます。ちょっぴり気取ったようなところも。

10 :名前はいらない:05/03/08 01:56:58 ID:DZ0sISGt
「ふたたび三月」

雨天に突き刺さる電信柱の
陰に隠れるものは何か
富士より染み出す冷水の
きらめきに潜むものは何か
あるいは極東の氷塊
あるいは中東の石油
あるいは欧州 北アメリカ
白人種のその皺の陰
断続的な電波と雨の隙間
白光が仰ぐ寺院
私のちいさな家の
ちいさな窓
暗黒の眼差しが
窃視症だと訴えかける
氷点下の水滴を意に介さず
私たちの一挙手一投足を
機械か何かのようにして見つめる
彼らの眼は紺碧
黒い髪
褐色の肌
磨かれたのは白い歯と
歴史的なことの知識
春雨と戦争の影に介在する
性倒錯者たち

11 :saracen ◆TPDxMezcT2 :05/03/08 02:13:46 ID:DZ0sISGt
名乗ります。明日を目指して休みます。(五七五)

12 :アカリ:05/03/08 21:10:35 ID:zzfM3NpX
『連日稼働』
 
とまる
ふえる
はいき
めざめ
きどう
 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆1様
批評をありがとうございます。書いたものを気に入って戴けて、とてもうれしいです。
自分の書いたものに対して、ことばを戴けると、自分のことが、わかってきて、とても面白いです。


13 :saracen:05/03/09 00:23:12 ID:5BKBIAe1
>12
こんばんは。批評なんかしてしまってすいません。アカリ様のおっしゃるよ
うに、自分の作品に何らかのリアクションがあると、今後の活動の為にな
ると思うんですよね。割かしインスタントにそれが望めるあたり、インターネ
ットはすごいなと感じている次第です。批評スレは活用なさっていますか。

今夜もシンプルに来られましたね。「数学博物誌」から、「ロボット」の項の
イラストを想起しました。何と言いますか、睡眠した状態を描写されている
のでしょうか。“ふえる”がちょっぴり怪しくて、小気味良いです。“はいき”と
言う辺りは正にロボットのそれを思い浮かべてしまうのですが、ちょっぴり
皮肉に人間を描いたものなのかな、とも読めました(“めざめ”とかも。)

14 :saracen:05/03/09 00:25:36 ID:5BKBIAe1
「最初の雨」

円環の始点はどこか
そう問われた私は
三月の土手で硬直する
錦糸の雨を頂いた桜の樹を見て 数日
最後の雨についてなら と私は思ったが
はや西の方から黒雲は近付いて来る


15 :saracen:05/03/09 01:01:32 ID:5BKBIAe1
「海辺の人」

私は庶民だから
銀糸と紗で編まれたローブを纏っても
出かけるべき所はない
林檎をもいだ帰途
杉の木が倒れていたら
何をするべきか
乗り越えて家に帰りたいけれど
あいにく私は盲目の群衆を知らない
彼らの持つ眼がこちらを見つめる
彼らは私を急がせる
海水にその身を浸したことがあるか?

あかい林檎をかじるために
ここに海水があればと思う
等分するためのナイフが
食卓でなくここにあればと思う
ただ 林檎をもいで木をどかしたその帰途に
肩を組んで眺める日の入りと
爽やかな潮風があればと願う
私たちは庶民だから
倒木をどかすために
銀糸のローブを纏っていなければならない
薄暮の中で引いてゆく潮を追いかけるために
いっぴきの魚を弔うために
出かけるべきところがあってはならないのだろう


16 :名前はいらない:05/03/11 02:12:34 ID:kwtG+ieS
− 一滴の月夜 −

夕闇を越えて空の果て
星に紛れて紺色の果て

僕らの背中を追うように
僕らの先を行くように

浮かぶ光はどこか悲しく
浮かぶ灯りはどこか優しく

月の明るい冬の夜
月の拙い冬の夜

心の流れが描いてる
月はそのままいつかの僕で

空白むまで尽きぬ時
朝至るまで消えぬ声

零れた月光 手の平の中


心配なので、保守変わりに。お邪魔しました。

17 :saracen:05/03/12 16:04:02 ID:PFJkb6lR
>16
わざわざありがとうございます。少し忙しかったので、しばらく留守にしてしまいました。
そうは言っても、案外大丈夫みたいですが。ご心配をおかけしました。また、けっしてお
邪魔という事はありませんので、ご安心を。

うーんどちらかとゆうと、リズムや構成の方にウエイトを置かれたのでしょうか。終わりに
近づくにつれて、内容が抽象的かつ暗示的になってゆくよう。ラストの“月光”は、“涙”に
置き換えても差し支えなさそうな気はいたします。明確な部分とそうでない部分の差異
が大きいのかな。最初の二連は月のイメージを捉えやすく素敵だと思いました。アリガトウ
ゴザイマシタ。

18 :saracen:05/03/12 16:06:22 ID:PFJkb6lR
「午睡」

穢れない雨滴が
古い屋根を打つ瞬間には
葉隠れのひばりが口をつぐみ
その冠で煤色の飛沫を受け止める
三月の窓は開け放たれるべし
うすい白のカーテン等引いて
室内の虚空は外気と融合する
曇天を仰ぐ小鳥の一声
あおられた雨の着地音
私が瞬くのに等しいそれらの間隔
春雨に従い時は流れる


19 :saracen:05/03/14 01:54:45 ID:JubiQ3oW
患部は腐れず、そこから花すら咲く。
しかし、それも病に過ぎないと言う…

20 :saracen:05/03/17 04:50:27 ID:ugiCyU7w
「漂白」

ああ春の日
彼女は鏡台に向かって化粧をしていて
両の眼の下に隈が出来たのが十日ほど前
不要な紫に立腹し 粗悪な鏡と罵った
放埓なその振る舞いは わが視界から静物を切り取って 去る
はたして鏡は
沈黙の世界へ
曙光の兆すことのない
忘却された暗黒の小室に舞った塵埃が
音もなく着地する
私はそれを追跡する
極端な無の静謐
幾らそれほどに暗かろうと
私は鏡の肌に指紋を残さない
息を止めて立ち尽くせば 古い木の台が初々しく軋むのが聴こえてくる

柔らかい桃の蕾も探しにゆきたい
手折った枝はほころんでいて その香は孤独と調和するだろう
桃色の陰の原色の意思を察知する
たとえば後ろ手にかくされた
一通の葉書の意味
眼光紙背

そして彼女は立ち上がった
先に行く旨を告げて私の視界から消えようと……
ふと目を遣れば備え付けの鏡台は白く染め上がっている
彼女の極めて自然に白い肌

私もゆくよ
君はどこに行っていた?

21 :saracen:05/03/17 04:54:58 ID:ugiCyU7w
暗からず
また雨降らず
寒からず
ばっとあいふぇると
らいくあんあくたー

22 :saracen:05/03/19 02:52:30 ID:FIXXtRP0
「せまい部屋」

睡魔を誘惑して酒をあおってみても
苛まれた瞼は一向に降りては来ない
ドラクロワーの女神はどこに行ったのか
我々は打擲されている
恋人の乳房は小さく鬱血している
不開の小窓から向かいの邸宅の小窓やヴェランダに目を遣って
日没の時が来れば家人の帰宅を願うばかり
こちらのテラスに植えた樹はもう絶えた……

眠っている体が
早朝の寒気に打ち震える
憂鬱なる身じろぎ 蠕動
カーテンの閉め忘れのひとつで
無反応な肉体は息を吹き返しもする
うすく瞼を開きつつ 目前の空間をまさぐってみるが
部屋の広さは変わりはしない

23 :saracen ◆TPDxMezcT2 :05/03/19 02:54:00 ID:FIXXtRP0
あ、ageてしまった。まあ換気みたいな感じで。石油ストーブ派だし

24 :名前はいらない:05/03/19 03:33:26 ID:1HESHGsi
ここでまともな詩を読んだ久しぶりだ
ユーは本物だ
絶対続けてほしいよ


25 :saracen:05/03/19 17:07:52 ID:2QD5ZUjy
>24
わー、ありがとうございます。コツコツ書き溜めて行こうと思っています。“本物”ってあま
りピンと来ないのですけど、はい。ともかく我を張り通してゆく積りです。詩についてほぼ
初心者も同然なのですが、今後ともご贔屓にお願いします。ぺこ。

お褒めいただいてしまったり、ageもまんざらじゃないですね。怪我の功名。

26 :名前はいらない:05/03/20 00:21:06 ID:JRjqI0um

なにもいらない
俺は悲しい唄ばかり歌う
生きてる痛みは肯定しない
ぶらぶら 崩れてゆくだろ

どこにある 俺しか見えないもの
どこにある 俺しかきこえないもの

当たり散らす景色
モノクロはカラーへぬりたくる
少年は大人へ歩く
星は宇宙へ散る
だらだら 少しでも遠くに行きたいだろ

どこにある 俺しか食えないもの
どこにある 昼間は陽が当たるとこ
どこにある 俺が足を止めるとこ
ここにある 逃げたくなるとこ





27 :saracen ◆TPDxMezcT2 :05/03/20 01:23:07 ID:Cq8Ajmmm
>26
何とも言えぬ、独特なる思想を感じ取る事が出来ました。と言うのは、所々に小気味のよ
い工夫が凝らされていると思うからであります。ちょい控えめなようで居て、ある種の独立
した意思を見ました。三連目の、イメージの陳列と言うべき物は、私も大好きであります。
今後ともそれを大切にして行ってくださると嬉しい、個人的にそう思います。平伏。

28 :saracen:05/03/20 01:24:10 ID:Cq8Ajmmm
「つながれた動物」

仄明るく寒い夜に
其の胸元に手を遣っても
早鐘の面影は遠く
穏やかな脈動が鎮座している
青白い月を其の喉で射ることも もはや無い
荒野に乳の夢を見るか
おまえはしきりに其の意識が遠ざかってゆくように感じると訴えているが
それは偏に其のたましいが
睡魔と媾合したためである
鏡の中で降りてゆく其の瞼


29 :.:05/03/20 01:46:52 ID:gCcgrrox

毎夜交わり重ねながら
恍惚と輝く月は
夜を吸い取り薄めながら
新たな朝を産落とす
消入りそうな喘ぎから白靄が湧き
濡れた繁みから朝禽は追い飛ぶ
騒しい産声が遠くから聞こえる
月はそして、それが夜になるまで
土中に蹲って泥になって眠るのだ



30 :名前はいらない:05/03/20 10:42:51 ID:JRjqI0um
>>27さん
細やかな評をいただきありがとうございました。
「ここにある 逃げたくなるとこ」が直前の文に対して音がよくないなぁと消化不良ぎみです。精進せにゃぁ。


>>28
色のイメージとして全体的に深い薄暗い青色が広がりました。
まどろんだ印象が最後二行の「睡魔」と「降りてゆく其の瞼」の表現と結合し、ただ単にボンヤリしたイメージに終始していないところに巧さを感じました。
所々ガツンと読み手を撃ち抜くような詩の描き方も素敵だと思います。
未熟者ながら勝手に評させていただきましたm(__)m




31 :saracen ◆TPDxMezcT2 :05/03/20 23:40:32 ID:vXffriFg
いちおう責任ある発言のため、トリップを常用する事に。

>29
わあ。とてもお上手だと思います。そして、共鳴してくださってありがとう。きっちり
とまとまっている印象で、冒頭の妖艶さがそのカドを取ってくれているようです。
あらゆるイメージが含まれているように思われて、さながら芳醇な水密を味わっ
たかのごとき読後感。てへへ。

>30
確かに、最終行には少しばかり違和感をおぼえます。唐突と言うか。おっしゃる
通りに、音の問題なのでしょうかね。私の方も>28は書いているうちに段々と減速
して行ってしまった感がありまして。推敲はやはり必要ですね。ともあれお褒め
の言葉を頂戴いたしまして、感謝の極みであります。お互い、気ままに頑張ると
しましょう。

32 :GO THE HELL:05/03/21 00:27:27 ID:mAskjcK+

脳みそが溶けるような日に
俺は監視員の眼に移り住んだ
世界を見放してやろうと思ったけど遅かったのは
真夏に燥ぐあの娘と白昼夢のせいだろうね

ソーダ水の空
癌の意味をなした雲

俺はじっと息潜めて体中の鎖を解いた
ネックレスも一緒に落ちたが
もう要らないこいつも首枷だ

外に出ると其処は
逃げ場のない太陽が横たわり
地の果てだと初めて気付いた
あの娘はただ海をみてた

カフェオレの砂
ひつじ涙の雲

あの娘は靴を片っぽ残し
俺の眼に映る光をさらって消えた
生まれる前から死ぬことを知ってた
画廊のような人生を歩いて来たわ

陽炎ゆらゆら
小さな海の蒼





33 :.:05/03/21 02:26:42 ID:IP9hVOee
>>31
どうもありがとうございます。
>>28の詩をみたら、以前に書いた自分のものを思い出したので張ってみた次第です。



34 :saracen:2005/03/23(水) 00:43:16 ID:noT0iw8p
>32 GO THE HELLさん(?)
ポップな感じですわのう。こういう風に書かれている詩には惹きつけられます。
"画廊のような人生"なんて言葉さえ、さらっと使ってしまう辺りニクいですね。も
ちろん、それまでの展開と調和していて違和感を感じさせるものではありません。

>33
気が向けばまたそのようになさってください。とは言えかようなsageスレでは
恐らく多数の読者は見込めませんから、まあ強制するのはやんぴです。

35 :saracen:2005/03/26(土) 00:03:28 ID:uPj1Lcn+
「獣の眼」

アフリカの荒原に城塞を築けば
正午に焼かれた肉体が
深夜のハイエナの標的になると言う
彼らは死体を漁る生き物だから
私と同じ眼をしているかしら
イギリスの博物館に保存されているらしい
東洋の絵画に描かれた獣の瞳は
人間の知性を湛えていたが

そうとも
鏡を見なければ
双眼鏡を取れ
南の地平線に草木らしきものが熱気にうだっている
象牙の白は分からない
西の中空に蒼然と月が浮かんでいる
複葉機の青いけむりがたなびいている
肉食獣の群れが
するどく夜に切れ込みをつくって
私の銃眼に眼をあわせる

唐突に出所の知れぬ夜光がきらめいて
われらをおびえさせる
互いに同じ眼をした獣
中国の色付きの絵と
同じ眼をした存在
そして欧州より来た
空虚な眼をした
皇帝


36 :saracen:2005/03/28(月) 02:40:45 ID:/2UZW8nF
「枯れかけの花」

遠くに置きすぎた花瓶が
細かく震えている
街路を一直線に
太陽の下に収束してゆく冷気のため
窓の開放を!
三月は春の駅
名残無く天球を晴らすべくして
陽光は町の隅々まで浸透する
私の家の開かれた扉と言う扉より
残存する寒気を奪い去るだろう

窓枠の白木に腰を据えて
この室内を感じようとするあなたの眼球は
 あくまで平面的
間近にある物を見る時に
大口を開けるその仕草のために
今黙してながめて居るのは
机上の濡れた杯
陽光を背にするその姿は
真新しい額縁に閉じこもった
西洋の技法で描かれる肖像画のよう
正午のつよい光は
写真のごとき克明さをその絵画から奪い去る

寒がりの人は
私を一瞥して その部屋を辞する
乾ききった黄色い水仙の挿されていたガラスの花瓶が
彼女の座していた所に倒れていた……


37 :saracen:2005/03/28(月) 02:42:33 ID:/2UZW8nF
諸々の漢字の表記の統一がなっていませんね。いい加減な物です。

38 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/03/31(木) 01:51:30 ID:USJVaV5G
トリップ変更。

39 :saracen ◆JPS.wiR1wQ :2005/03/31(木) 01:52:09 ID:USJVaV5G
おやすみなさい。

40 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/07(木) 00:18:56 ID:SLs54Y+M
「地表」

春とともに命が誕生する
川のそばで柳が揺れている
ある場所では季節も無関係に
汚れたラフな 木綿の布から
生殖の観念さえない幽かな
虫が発生するだろう

そしてまた生命は消滅しもする
深夜零時の凍える風までに
午後の陽光を忍びきれなかった
矮小な魂は蒸発する
また 真新しい棺は大きな動物のために
手の平のうえのサラの釘は
おぼろげな羽虫が何匹も
その白い魂をむき出して飛び交う
常夜灯の下で虹色であった

時折"金物の筒"が
宇宙へ飛び出して
地球を眺めて還ってくるが
生と死の集積物に満ちた
この星の肌の色は青褪めていようか
爛熟した肉が焼かれて
つめたい肌に涙が落ちる
裸で寒い部屋を通り抜けて来る

みじかい指で触れようとするな
雲を掻き分けて
見る物は
死体の傍らで媾合する人々

41 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/07(木) 03:09:15 ID:SLs54Y+M
「夜と朝」

何とも
愛しい人
あなたが崖の淵に立つことは
この身の破滅の予感
蒼い月にその白い手を伸ばせば
この身は慄然とする
その母の胎内にあった時から
排ガスを吸って
今も日光を浴びることがない
癒着しそうだと言う瞼で
ガラスの花瓶に花を生ける
メチャクチャな色の取り合わせで

毒ガスを吸うのを止めないで
満足に化粧品も揃えられぬのに
出歩かなくていいのですよ
蠱惑的に目と唇を動かして
他人を恐慌に陥れればいい
夜中にあなたの魂が
誰かの五感を満たせればいい

愛しい人
四月は
あの御寺に
夜桜を見に

42 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/07(木) 03:13:00 ID:SLs54Y+M
あげっちまった悲しみは、トリップ・パスを忘却した報いだ。撤収

43 :mayuki ◆kTbUDdAxZI :2005/04/07(木) 12:36:16 ID:28WGPXhR
目が覚めると部屋は既に暗く
開け放してあった窓から夜風が静かに下りてきて頬を撫ぜた。
白いカーテンがゆれるたびに優しく撫ぜた。
部屋の明かりをつけて少しの間夢うつつだったのだけれど
どうにも静かな夜で、奇妙な空気が漂っている。
静かでそして不思議な夜だ。
月が落下してきそうな気がしてならないような、
背後にメフィーストフェレスの気配を感じるような、そんな夜だ。
こんな夜は窓の外を三日月サーカス団が興行行脚していそうな気がする。
電線の上を不気味な笑みの化粧をしたクラウンが歩いているのだ。
こんな夜は窓から部屋を抜け出して、
裸足に寝巻きのまま夜の散歩を楽しみたい。
新陳代謝がいかれている僕の体がやっとうっすら汗ばみ始める頃
朝の自分への土産に川べりで眠っている花を一輪摘んで帰りたい。
そんな僕の願望を唆すように夜は不可思議さを帯びてゆく。

僕は目を瞑る。
そうして精神を無にする。
このまま一時間も無防備な魂であると
間違いなく悪魔に全てを奪われるだろう。
そんな危険な遊び。

歩道橋の柵の向こうで車の光の流れを見下ろしているときのような心地。
そんな危険な魂の露出。

ああ、とてもいい夜だ。                                                                  

この夜に、
やわい心臓が握りつぶされてしまいそうだ。

44 :mayuki ◆kTbUDdAxZI :2005/04/07(木) 12:39:50 ID:28WGPXhR
スレッドのタイトルが大変好みでしたので
僭越ながら昔書いた夜のものを貼らせていただきました。

わたしもsage進行で地下で生きております。
どうぞ宜しくお見知りおきを。。

45 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/07(木) 23:52:35 ID:X/a4kNik
>mayuki様

はじめまして、今晩は。大気が澄み切って、月も良く見えるような夜は、都会で
あれ田舎であれ場所を問わず、確かに人をそんな心持にさせるものだなと思い
ます。何らかの衝動や、不吉な感覚を呼び起こしたり、ともかくそこに、理由のよ
うな物はないと思えるのですよね。そういう意味において、思った事感付いた事を
淡々と描写して行く、独白調のこの詩は大変良き物であるなあ、と。ルナティック
で、西洋的な感じも個人的に好ましく思います。

私はこの板のスレッドを把握しきれていないのですけど、その内お邪魔させて
もらいますね。地下で、書いていらっしゃるとかで…。こちらこそよろしくお願い
しますね!ありがとうございました。

46 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/07(木) 23:55:11 ID:X/a4kNik
「土曜日、夕刻」

闇の只中にあって
手探りで
細いタバコに火を点けてみると
そこかしこで
同じような紅色の眼が瞬きはじめる
その間紫煙は出口を求めて彷徨っているが
われらの肺の何と狭いこと!
この暗い部屋が呼吸器の片割れなら
疲れきったわれらの肉体は
タール漬けの肺胞だ
幻のような絹糸がそれらを取り巻いて
霊魂を苛んでから
彼らにしか通れない排気口を
蒼白な顔をして帰ってゆくのだ
労働者の肺腑を汚染するだけの
生白い害悪
苔生す六月の空は湿気ているようで
最初の雨滴が慌てて
飛び出して来た最初の者を殺し
堰を切ったように殺戮の豪雨が
灰色の風を伴って降り始める
われら労働者は
かすかな笑みさえ漏らさずして
軋み出した天井を仰ぎ見る
まだ長いままのタバコを咥えて

47 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/09(土) 03:25:16 ID:9tf1DHTw
「チムニイを通って」

1
オルゴールが鳴りっ放しになっていたために
少女が目を覚ます
午前三時の
モノクロームの室内では
その娘は白人なのか
有色人種なのか判然としない
彼女はひとつあくびをして
小さな箱の所在を確かめにかかる

わたしの目覚めは
どこに在るか
かくのごとく霧中にあっては
ここに辿り着いた経緯ははっきりしない
触れた指の先に
白い乳が付着しそうな靄があり
背の高い杉が散見される
地に緑の草
灰白色の空はまるで
自重を支えきれぬとばかりに垂れ込めている
吠え声が聞こえる
濃密な大気を吸いながら
懐中時計に目を奪われていると
夢中の意識は失われてゆく

48 :名前はいらない:2005/04/09(土) 03:26:09 ID:9tf1DHTw
2
階段を降りてすぐの食堂も
同じように明かりは灯されておらず
暗い中に大きなテーブルが鎮座している
無地のクロスの中央がイビツに盛り上がっていて
彼女がそれを摘み上げると
暖炉の熾火が静かに崩れた
娘の虹彩に蒼い色が宿る

 目を開いて時計を眺めやると
あまり時間は経っていないらしいが
わたしの所在は移り変わっていて
どこかの家の居間であるようだ
雷が轟きはじめて
背の低い犬どもが邸宅の周囲を窺う様子が
しばしば近くのガラス戸に投影される
わたしは喉の渇きをおぼえて
稲光と獣の咆哮の背後に在る
蜜のような音が導く方へ歩み始めるが
娘はクロスをかなぐり捨てて
夜着の肩紐を正し
オルゴールの蓋を閉じてしまう

49 : :2005/04/09(土) 03:27:21 ID:9tf1DHTw
3
どうしてこの家の広い食堂に居るのか
この家の広い食堂につながったのか
わたしにも彼女にも理由はわからない
ただ
ふたりの前に在る 暖炉が震えている
ふたりを呼んでいる
彼女の頬にそっと赤みが差した

わたしはアンティークのオルゴールを預かって
娘の白い手も引いてマントルピースをくぐった
最奥は清冽な力に満ちていて
微細な物にはたらく
特別な引力が
ふたりを浮上させる
オルゴールの蓋を開ければ
そこには極彩色の
モダンな世界が広がっていた
茫然と見とれていると既に周囲も同じようになっており
またあの濃い空気が運ばれて来る……

50 : :2005/04/09(土) 03:28:09 ID:9tf1DHTw
4
眠りと目覚めの境界はどこに在ろう
われらの肉体と精神の境界は
夢の中では"労働"をせず
単純な疲労ばかり募りはするが
五感は生きている このように
扉を開けて太陽に目配せをする
羊皮紙に書き付けられた
蒸発しそうな彼女のメッセージは
われらの飛び跳ねる様な喜びを謳っているが
後に降り立った路地に敷き詰められた
ステンド・グラスの破片を嘆きもしていた
杉の林で一度落ち合いましょう
犬を連れて
寝そべって待っています
これからその小路をゆこう
欠片を摘み上げてつくる
チムニイを通って

甘美な熱や旋律に浮かされたまま
振り返ることをしないで

51 :mayuki ◆kTbUDdAxZI :2005/04/09(土) 08:37:19 ID:mNzL64wY
sarasen様、おはようございます。
あなたの詩はすごく好みであります。
これからもたのしませて頂きます。
私の詩は↓に色々ございます。句なども多いですが
お暇なとき遊びにいらしてくださいね。
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/poem/1112356482/l50

52 :sarasen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/11(月) 00:33:28 ID:M+ugfgGq
こんばんは。遅くなりまして。わざわざご紹介いただきまして、ありがとうござい
ます。お褒めに与り光栄です。あまり沢山は書かぬものですから、このように詩
板を訪れる回数が少ないのですが、どうぞ今後ともご贔屓にお願いいたします。
固定HNによるスレッドの独占は削除対象ともなるようですし、……是非。

手ぶらでは何ですから、今宵はそちらを拝見させていただくまでにいたします。

53 :sarasen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/12(火) 23:06:05 ID:eqmVEJWR
「船酔い」

濃霧の遊覧船に乗り
レインコートを纏って
甲板のフェンスに寄り掛かったら
異常感のあまり微笑が漏れた
息を吸い込めばむせ返り
呼気は絶望的な安堵をもたらす
わたしの体重が増減を繰り返す
カモメたちが墜落し始めている

航跡とさほど違いのない
白く波立った海面を見ると
海そのものが酔っているようだ

私や鳥獣が幻影を見て
それらは砕片と成り果てて
海面へ落下する
小動物は墜死する
蒼白な
あまりに蒼白な海は
あぶくとあぶくの合間に穏やかな表情を見せて苦悩する
スクリュウは撹拌する
夢想と船は推進する
港に帰り着けば
デッキは反吐で一杯だ
白い羽根に覆い被さった肌色の吐瀉物で

54 :sarasen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/13(水) 01:01:13 ID:hbmyQN1f
「野辺」

無数の切り株がある野原に出て
この地の林が幾度
死と再生を繰り返したのか考えていたら
あっという間に陽が落ちてしまった
一斉に無数のコオロギが鳴き始め
わずかに残った樹に暮らす
ミミズクがしきりに首を傾げだす
かれらの音楽は無限
かれらの眼球は夕日と三日月の光を受ける
鳴き止みもせず
飛び立ちもせず
間近の石の上のコオロギを踏み潰しても
野が鳴いている
檜の高みに石を投げれば
梢には薄い闇がわだかまっている
振り返ってみれば
誰かが私のことを見ているかもしれぬ
その者の視界の中の私の衣服が剥がれて
肉体が朽ち果てて白い骨になり
空がつよい白光に覆われて
瞬く間に育ちきった樹木が切り倒される
そうしてやがて
一人の労働者が立ち止まる

55 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/13(水) 01:06:45 ID:hbmyQN1f
うわっ恥ずかしい、名前をローマ字打ちしていた……

56 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/13(水) 01:34:32 ID:hbmyQN1f
「野の闇」

街の北限から
更に北方を望めば
遠い地平に歪んだ桜の木が無数にあり
吹きつけてくる風の中に
時折桃色の物が混じっている
そのことを体験した労働者が
数日前涙ながらに語っていたものだ
(私はそれを真似てここに来た)
頬に向かい風と
轟々たる音を受け止めながら あくびをしたら
野犬どものいる 囲いの向こう側へ
 飛び出したくなった
そのまま昼と夕とを過ごして夜を待てば
私の肉体は何か弱い動物に変貌して
五感は剥き出しになるに違いなかったが
私は自分の部屋に戻らぬわけには行かない
犬の胃に入るのも
皮をひん剥かれて市場に並ぶのも
私にはまだ望まれておらぬことだ
後ろを向いて足早に
駆けねばならない
死者と野生と好奇心から伸びる触手を振り払って
桜を含んだ風のとどかない所まで

57 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/13(水) 01:55:03 ID:hbmyQN1f
「白い紙」

私の魂は定型で、五つの突起を持ち、肉体が焼かれれば不定形の迷い雲となる。
その時高い高い青空で何を感じるだろう、たとえば纏わり付いて来る見知らぬ雲の事など。

夜に滑らかな石の上に腰掛けて焚き火をし、君に貰った白い紙を翳してみても、
そこに映る"頭部"の形をした影の輪郭は、炎の舌と共に揺らめくばかりで、一向に崩れる気配を見せない。

58 :mayuki ◆kTbUDdAxZI :2005/04/13(水) 18:30:12 ID:Rn96lUwW
ああ、大変素晴らしい言葉たちです。
このような詩や文章を書かれる方に(間接的ですが)出会えて、
またその作品を読む事が出来てわたしはもう本当に幸せです。

全てプリントアウトしてじっくりと味わうように読ませて頂きます。。。

スレは多分削除されません。仕事も忙しく
なかなか作品と呼べるようなものを書けませんが
これからもお付き合いのほど宜しくお願い致します。

59 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/14(木) 22:23:38 ID:Y84/fTPb
>58
こんなに持ち上げてもらってしまって、嬉しいやら恥ずかしいやら……です。
mayukiさんは少しばかり大袈裟な方なのですね(笑

私の方も毎日の暮らしが忙しいもので、今後は頻繁に訪れることが難しくな
りそうなのですけれど、はい。こちらこそよろしくお願いいたします。
暮らしと申しましても、まだ社会人ではありませんから……そういう意味で、
沢山のお褒めの言葉を頂戴するのは、恐縮の極みであります。どうぞ、今後
ともお手柔らかにお願い申し上げます。

60 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/15(金) 00:27:14 ID:zf0Xrvqx
やはり、当分の間活動を自粛する事にします。今夜をもって詩板を辞します。

漂白された人格を求めて、また戻り来る日まで。ありがとうございました。

61 :mayuki ◆kTbUDdAxZI :2005/04/15(金) 01:29:44 ID:fknMM8O1
すみませんでした。
大変残念に思っております。
わたくしの考えが至らずあなたのような方が名乗ることを
詩板活動を辞めるという方向に向かわせてしまいました。
あなたの詩を読んでおそらくそのような方であると察することは出来ました
ので、スレ名は控えて、皆様に良き詩人を教えて頂いたぶんわたくしも
ほんとうに良いとおもう詩人さんとしてあなたの名前を公にしてしまいました
大変愚かしいことをしたと思っております。
あなた様と、それから他のやはり良いと感じて作品を
楽しみにしていらっしゃった方々に大変申し訳なく思っています。
saracenさま、みなさま、すみませんでした。。。。

62 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/15(金) 04:35:12 ID:zf0Xrvqx
>61
こんばんは。目が覚めてしまいましたもので。どうやら誤解なさっておられ
るようですので、最後にそれを何とかしておきたく思います。

私が活動を辞めると申しましたのは、偏に私生活が忙しくなった為です。私
の名前を公にしたとおっしゃいますが、はじめからそれは為されている事で
はありませんか。mayukiさんが責任をお感じになって、私に謝罪なさる必要
は微塵もありません。暗い気持ちは必要ないのです!あなたや、他の名無し
さん方に、お褒めの言葉を頂いた事を素直に嬉しく思っています。最後まで
お気を遣わせてしまって、本当にすみません。誤解と申しましたのは、その
事なのですね。幾ら毎日忙しいとは言え、また戻ってこれようと感じており
ます。その時までお元気で!

63 :真雪 ◆kTbUDdAxZI :2005/04/28(木) 14:47:57 ID:2MmWlhrn
実は怖かったのと申し訳なかったので今の今まで↑のレスに気づかずに
おりました。来てみて良かったです。本当に。
お帰りを心よりお待ちしております。
きっとあなたの死を楽しみに待ってらっしゃる方が私のほかにもおりますし。
それまでは保守しますので、毎日をお元気で^^

64 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/29(金) 01:34:59 ID:M2rUdPP9
真雪さん、こんばんは。割かし早く、と言うか二週間で戻って来られました。

蛇足になりますが実はリアル・ライフと詩作との両立に苦悩しておりまして、ここを離れる事が正解と判じ
て、実行に移した訳なのですが、それもやはり、自らをコントロールするのは万事においてこの私しかい
ないわけで、心持ひとつで何とでも出来ようと感じたのです、先日。ご機嫌を損ねてしまって、本当にすみ
ませんでした。こんな風にエピメテウス式思考でもってパッパッと行動してしまうタイプですから、まあ
ほどほどの距離をお保ちになっていただければ、今度のような事は起こるまいと感じております。大変
ご迷惑をおかけしました。……と言うわけで、>63のタイプミスに関しては黙していようと思います。あはは。

65 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/29(金) 15:55:14 ID:OFR4ZBoy
「或る旅」

静けさと厚い雲の為に他の誰も目を覚ますことがないまま
古めかしい汽車の二等車両に私の身体が揺られている
座している窓がわの席の左手には
窓枠ばかりあって窓ガラスがない
絶えずそこから白色の靄が侵入して来るのは
列車がはしるこの一帯が乳の薄膜に閉ざされているからで
それは果てしないものであるように感じられる

ふと下方のレールを見れば
枕木までが透明な水に浸かっている
白木の枠から身を乗り出せば
あたりは鏡面のように凪いだ水銀色の湖であり
六両編成のわが列車がそれに航跡を残している
煙はあって煙はない 吐かれているが吐かれてもいない
乱れて広がる溝を見た誰かが汽車の通過を推して知るばかり

66 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/29(金) 15:55:49 ID:OFR4ZBoy
私の腕時計が正午を指して停止する
窓外の風景も止まる
隣席の女が目覚め慌てて立ち上がる
「ああ、こんなに眠ってしまっていたなんて!」
急に立ち込めた靄のせいで女の顔は見えなかった
女の顔を忘れてしまっていた
そうして女は列の只中で小突かれながら他の乗客達と下車した
その駅で乗り込んでくる客は居なかったので
私は隣に出来た空席をしきりに眺めた
先頭車両が動き出す
金時計は私を眠らせない
眠りとはいかほどのものか?
私にはもう揺り起こすべき人がいない
もう思い出す顔もない
私の心臓の脈動とは違っていた時計の秒針のリズムが
静かに私のそれと重なり始める

67 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/04/30(土) 02:14:39 ID:Oj6dsXOk
「虜」

1
薄汚れた布袋のごとき衣を纏って
赤く錆びた鋤を広すぎる原野に打ち下ろす
髪も肩も腕も日に焼け切っている
その世代が移り代わっても
かつての生地に骨はない
熱性の 輝きに満ちた地から
穀物の袋を頭に被せられ連れて来られたのだ
両手首に食い込んだ麻縄の跡がなまなましい
かれらの見る夢は永遠
逆説的に導き出される永遠

2
人類の帝国はあらゆる感傷を内包する
感傷を内包するがゆえの一個の帝国
かつてない慈悲に満ちた
寛大で善なる国家
私がこうして振り返ってみても
このような国は歴史のどこにも埋まっていない

68 : :2005/04/30(土) 02:15:24 ID:Oj6dsXOk
3
私がほじくり返した
土くれの傍らでかれらは夢を見る
かれらと言語も文化も肌の色をも異にする支配者の
滅亡の夢
絶滅をかれらは夢想する
水のみ場から遠く離れた水道橋が流血とともに瓦解し
錆びたせせらぎが死んだ鼠を暗渠までやさしく葬送し
皇帝がその玉座で糞便にまみれ
女という女が飢えて喘いでいる様子を
むろん囚人はそのずっと前に一人残らず絞首刑に処され
死刑囚はもっと無造作に生命を奪われた
かれらはかれらの子孫を思う
荒れた広場に集合するそのひ弱な生き残りは
めくれ上がった石畳の隙間に
希望の麦を植えるだろう
暗黒の夢想の中では
雨も降るまいが
それでもかれらはどこからか水を手に入れてくるだろう

69 : :2005/04/30(土) 02:16:08 ID:Oj6dsXOk
4
かれらの夢は理想の国家をつくり上げる
剛健な肉体と
感傷的な精神を備えた
大いなる労働者の集合体を
過去において駆逐されるべきすべては
砂礫に埋没した懐かしの帝国が
剣と血をもって絶滅し尽したから
最後の帝国は憎悪の対象を決める必要もない
膨張し
膨張して
ある時大量の死者が出るだろう
蒼白な帝国の代謝
もはやそれは永遠なるものである
もう誰も
大地の代わりに呼吸しない
津波の代わりに瞬きをしない
万民がその胸に感傷を抱いて
一定数の集団が
定期的に自殺を遂げるのみである

かれらには生地がない
死地にはその墓もない……

70 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/01(日) 02:19:49 ID:HAsNT6om
「或る庭園」

時が来た、
西欧の、
海上の霧に霞む太陽が痙攣し、
古い世界は数度のまばらな暗黒を経験する。
私は、
苔生した敷石の上に倒れて考える、
去っていったあなたのことを。
壁のすぐ向こう側のせまい入り江で、
小魚が跳ねる。
私はまた思う、
渇きを知らぬ魚になりたい。
いたずらに、
その身を海風に委ねるつもりで、
海面に跳ね上がってみたい。
ああしかし、
この身を如何に変えようとも、
私はこの庭園に戻り来る。
日を越え、月を越え、
風化した文明と、
点滅する太陽の下に、
大海の追放者として。
時が来た、時は来たれり……

71 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/01(日) 02:47:22 ID:HAsNT6om
「或る窓外」

少し離れて疾駆する汽車には
タバコをくわえた女の顔が見えて
私はそれに懐かしさをおぼえる
その先端に火を近付けてやりたいが
生憎私の腕にはかなわない事だ
彼女は何も気に掛けないだろう
何をも……
女の乗る列車がその上をすべる
レールの姿が私には分かる
すでに下り坂に差し掛かっていて
そこには何の恣意的な力もないだろう
彼女は行ってしまう
交わらない線路には事故は起こらない

沈黙の一帯を列車たちは抜けて
死者の世界を通り過ぎる
そこで見た死者たちのそぞろ歩きと散策!
魂はどちらの側にあるものか
私の意識は列車の外側にない
死者と名付けるものの戯れ
枯れきった木に血濡れの果実が実っている
かれらは死んで見せているのだ
この私達の生と言うものの
何と曖昧なこと
女はずっとタバコをくわえたまま
その先端から
女の唾液が染み出す頃に
汚れた木の果実は地に落ち
私の列車はひとつの国を抜けて
また次の国へ

72 :◆kTbUDdAxZI :2005/05/01(日) 03:48:20 ID:OZwDJYys
おかえりなさいませ。>>63のタイプミスに驚きおののいております。
大変失礼にも程がありますよ。自分で驚愕でした。
朝まで夜の随想を満喫させて頂きます。



73 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/02(月) 02:01:59 ID:cEm/jrR7
お気になさらずに……(n‘∀‘)η
私も無音演奏の方、楽しませてもらっています。0さんの作品には、一種特別なイメージや思想が感じ
られて、とても興味深く思っています。詩人街のBarとはゆかずとも、Cafeには足を運んでみたいです(笑
Profileも拝見しました、好きな教科が私と同じだったので、びっくりしています。ですが、数学もトライして
みると、割と面白いかも知れないです。

74 :真雪 ◆kTbUDdAxZI :2005/05/03(火) 00:55:19 ID:N7jIPMK+
そうですね。数学はやればやるほど楽しくなってゆくものだと思ってます。
中学校くらいまでは勉強は何でも好きだったのですが
ただ右脳動かすことばかりが好きで左をほうったらかしにしていたために
数字を見ただけで(?A?)な人間になってしまいました。
人間常に勉強せねばならない生き物だと思います。
なにせ脳の数%しかつかってないらしいですからねえ。。
100%フル起動の人間がもしいたとすれば一体どのような生き方をするのでしょうね。



75 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/04(水) 01:52:17 ID:j0Rqw1H/
真雪さんは芸術家肌な方なのですね。私はあんまり創作的な所がなくって、小さい頃はただ漠然と、世
界を形成する有象無象のひとつとして、存在していただけのような感じでした。脳は使った覚えがありま
せんね。思い出せることと言えば、こんな軽口くらいのものです、お恥ずかしい。

数学は時間の経過を意に介さず、だらだらと取り組んでみると、案外はまれたりしますね。かく言う私は
数学することに意味を見出せずに、中学校の頃から嫌いだったのですけれども。まあ今では何とはなし
に、自己充足の為の作業の一環として、参考書のページを繰るようにはなっております。ええとですね、
私は正直な所、もともと勉強があまり好きでなく、趣味の読書に没入してばかりいました。学問の重要性
に気が付いたのも極めて最近の出来事ですので、そろそろ語るのがはばかられます……この辺りで。

76 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/04(水) 01:58:35 ID:j0Rqw1H/
>74
もうひとつ、何度もこちらにはお足を運んでいただいているのに、こちらは動く事がなくて、申し訳ない限
りです。きっとその内に、お邪魔しようと考えております。長い目でお待ちくださいね。

77 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/05(木) 01:26:55 ID:uRR44WDn
「夜半」

目隠しされていたのに気付いて
身悶えてみたら
あっさりと視界が開けた
銀色の
かれはどこに帰ったのだろう?
私は少なくとも
その場所にだけは心当たりがある

78 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/05(木) 01:54:43 ID:uRR44WDn
神様はどこに居るのでしょう、一体。
私は、キリスト教の神様と言うのは、たとえばギリシャ神話で言うところの、
かまどに対するヘスティア、月に対するアルテミスのごとくに、西洋哲学に対するかの神、と捉えています。

79 :名前はいらない:2005/05/05(木) 07:47:06 ID:LhpTGh2T
仮説。

西洋哲学の基本は<Kogito elgo sum>、我思う、故に我在りと言う呪文。
所謂『世界/自我』の二元論。

ならば、神が宿るのは世界では無く、世界を解釈し再構成した「私の認識」の内、だろう。

…あ、済みません。偉そうな事書いちゃって。
貴方の詩、好きです。応援してます。

80 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/05(木) 14:26:28 ID:uRR44WDn
>79
こんにちは! ありがとうございます。
ちょっといい加減な事を書いてしまいました。本気でキリスト教徒になろうか、考えていた所で、ぼんやり
とロマンチックな想像をしたと言うわけです。そもそもギリシャ神話の神様と、一神教の神様とでは随分
性質が違いますもの。私は、異端者ですね(笑)。名無しさんは仮説だとおっしゃいますが、その説にとて
も興味を覚えましたので、週末は読書に費やす事にします!ご指摘賜りまして、たいへん嬉しく思ってお
ります。ご感想の方も、重ねてお礼申し上げます。ありがとうございます(n'∀')η
今後とも精進してゆきたいです。

81 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/07(土) 02:17:55 ID:5miFkxH6
「花」

傘を頂きながら
私は午後六時の薄暗い大通りを進む
行き交う人
通りすがる人
みんな何かの傘を差している
たくさんの傘
無数の雨

人は何と儚い植物だ
パスカルは私たちのことを
考える葦だと言ったけれど
花も咲かない草だなんて
むろん
私たちも数百年を経て
高等な植物へと進化したに違いないが
その儚さにかわりがない

82 : :2005/05/07(土) 02:18:32 ID:5miFkxH6
私は上手く咲くぞと
液肥の海に浸って
今誰か思っているかしら
その人のフォト・アルバムに
薔薇色の微笑を湛えて写っているのは誰か
君がママの胎内で美しい種になった時から
君の生命はスタート・ラインを踏み越えている
長い時を暗黒の中で過ごして
大きな泣き声とともに萌芽する
そして君はたちまちのうちに赤い花を咲かせる……
咲いた花はもう一度咲くことが出来ない
引き攣るその花弁を持続させることが
言わばこれからの使命
君の赤い花の!

私は駅前のながい階段を一挙に駆け上がって
その高みから通りを見下ろす
そこにある
いくつもの 美し過ぎる花
私はしばらく傘を閉じないままで
改札口に近づいてゆく
私の青い花
どのように散るのだろう?

83 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/08(日) 01:34:30 ID:sv+us/Ii
「雨の日」

遠い国で銃殺された男の魂が
猛烈な熱風のために四散して
世界のあらゆる場所に行き届く
私の町では涙に姿を変えて
かれの死んだ床と同じ色の空から
人となく物となく降り掛かる
みなの蝙蝠傘は感傷の表明
そのうちに私は運命的な一滴を受けて
青い傘をかなぐり捨てれば
路上に叩き付ける激しい雨
アラビアの灰色の床の上で
血に濡れた男が静かに立ち上がる

84 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/08(日) 01:36:37 ID:sv+us/Ii
しもた。
   
>80のL7のかおを(n‘∀‘)ηにあいぷちしたいです。

85 :whorekitten☆ ◆j1KkCeLwDc :2005/05/08(日) 01:47:12 ID:05A9oX9U

ガラス夜の淵に氷が溶けきると
朝陽が昇るんだって とおい昔のことさ
彼女は爪を噛みながら
知らない場所に行きたいという

夕焼けが 幕を降ろす
また暗い空にふたりぼっち
ふたりぼっち




86 :mayuki ◆kTbUDdAxZI :2005/05/09(月) 14:27:46 ID:cktx6hrA
sarasenさん、こんにちばんは。
「花」見事です。素敵ですねぇ。
葦ではあまりに味気ないもの、花を咲かせたいですね。
紫陽花がもうすぐの季節ですね。
色が色々に移ろいゆくことから八仙花と呼ばれているそうです。
雨の夜もまた良いですね。

87 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/09(月) 22:40:53 ID:rP/uVjMx
こんばんはー

>whorekitten☆さん

どうにもならない寂しさと言うか、閉塞感が良く表現されていると思います。L1の"ガラス夜の淵"だなん
て、独特のロマンティシズムですね。作品としての完成度は申し分ないように思うのですけれど、前述
のあなたご自身の世界観と言うものを足がかりにして、この詩はまた、様々な方向に展開してゆくこと
も可能なのではないかな、とも感じました。

>mayukiさん
私は、既に花と言うものは咲いているのであろうと、常々思っています。そうしたことから、かの人がわ
れわれを葦としたのも頷けるな、とも。とは言えネガティブ一辺倒なのではなくて、咲いた花のために出
来ることは、とも日々考えている次第です。どうにも生意気で、ごめんなさい。紫陽花ですかー、雨と蛙
と六月ですね。好きな植物ですが、異名もその由来も初めて耳にしました。お詳しいのですね(n‘∀‘)η 

88 :名前はいらない:2005/05/11(水) 00:12:33 ID:FXXdttUm
>>87
saracenさま
いえ、もうとんでもないです。逆に書き殴るような真似をしてしまい申し訳ないです;今読み返してみたら尻切れっぽいですね。。。精進せにゃー。
またお邪魔させていただきますね^^では!



89 : ◆HDMUcC9vFA :2005/05/12(木) 02:12:58 ID:7zSNvD5J
お前の声を 世界を
何度も何度も巻き戻し生きる

裂けたお前の心臓が いつまでも胸の中咽ぶんだ

死闇を染めてゆく
薔薇色が
この肌をつたって

何処だ


90 :名前はいらない:2005/05/12(木) 02:39:25 ID:7zSNvD5J
あなたじゃない私じゃないお前じゃない僕じゃない
俺じゃない君じゃないわたしじゃないぼくじゃない
あたしじゃないおれじゃないきみじゃない・・・

胸が空くのです

ねえ 元気でいて下さい


91 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/12(木) 08:37:26 ID:HyUVTCOx
おはよーございます。

>88
はい、お好きな時においでください。こちらこそ、単なる感想しか申し上げられませんで、恐縮です。ご
めんなさい。何とはなしに懐かしいその世界観、私は好きですよ(n‘∀‘)η 書きなぐるだなんて、あま
り気になさらないでください。このスレッドに書き込んでいただけたことは、大変ありがたいです。

>◆HDMUcC9vFAさん
>90は独白調ですね。>89のL4などは、求める人の存在をより重要な物たらしめる役割を果たしている
ようですね。胸中で思い人の心臓のことを感じるなんて。特にage/sageがどうこう思いませんので、そ
れはもうお好きなように。

92 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/12(木) 08:39:25 ID:HyUVTCOx
「涼しい夏」

湖のほとりのレストランで昼食をとり
見慣れぬ果実の生った木を見た帰途
汗で君の白い手がゆるんだ瞬間
あっという間に日が落ちて
三日月が夜空に肉薄する。
袖なしの薄いブラウス
襟元に覗くこの世界の
湿り気のある導火線
私は真っ暗な道に跪き
庭の日傘の下で割いた牡蠣の身などを思い出す。
未舗装の路面に口付けをすれば汽水湖の様相
喉の奥から飲んだ泥がせり上がって
白い人がようやく追いついて来る
月曜日の曙光がにがにがしい今と
眠る君の頬にきざしている。

93 :1/3 ◆TPDxMezcT2 :2005/05/15(日) 02:37:38 ID:I8rxWWUE
「トリコロール」

ここと決めた家に
三人で押し入ったのは四時間前
日は暮れ果てて縞馬柄のシャツは
レントゲン写真のようだが
僕の心臓を写さない


雨後の舗道をうつむいて歩いた時は
誰もが強盗の計画を
野蛮な心持ちで描いていたにちがいない
この時間には人気のない
角の家のポーチに忍び込み
網戸に飛び出しナイフで切れ目を入れる
綺麗な札束
そして
どこか儚げな
赤い
赤い血……
一週間前のこの時には
確かに誰も居なかった

94 :2/3 ◆TPDxMezcT2 :2005/05/15(日) 02:39:14 ID:I8rxWWUE
するどく切り裂かれた網戸
年下の男が振るったナイフより
さらに鋭利な
青い眼をした娘のあげた悲鳴は
僕らを瞬間的に獣と変えるに
十分な力を持った魔法だった
そして先頭に立った縞馬が目の色を変え牙を覗かせ
娘の左胸に銃で穴を空けた
かれの祖父の家にあった銀色の銃で!
娘は目を閉じずに死んでいった
金色の髪を振り乱して
白い体を床板に横たえた

紙幣や硬貨を両のポケットに詰めてその家を飛び出す
行き先は誰にも分からなかった
娘とともに彼らの理性は死んで
その野生がかれらを先導した
僕は走った
太陽のほうに向かって郊外の丘のほうへ
お誂え向きの野へ
三匹は散り散りになっていた

95 :3/3 ◆TPDxMezcT2 :2005/05/15(日) 02:41:13 ID:I8rxWWUE
白黒のシャツの左胸のあたりに
生乾きの赤い血が張り付いているらしい
花の香に交じってそのにおいが届いた時
すでに太陽は西の空になく
一番星が燦然としている
なんてこと
銀色のピストルを忘れて来た
僕の体からあらゆる光輝の物は失われて
この身は僕のものでなくなってしまった
辺りは静まり返って
パトロール・カーはとうとう来なかった
眠ろうとして月のほうを振り返れば
翼を広げた金髪碧眼の天使が飛来し
こちらにウインクしてみせた

返却すべき金銭も
冷めやらぬあの血も携えているけれど
娘にはもう
美しい肉体があるばかりで
それらの物に触れる指を持たない
僕は立ち上がり
街のほうへ歩みはじめる
点々と続く
血液のような白い羽根を辿りながら
どうにか天使に心臓をかえすために

96 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/15(日) 02:52:27 ID:I8rxWWUE
「Child Tree」

チャイルド・ツリーの絵を見たことを思い出しながら
私は帰途につき
家に戻ればある種の若木にしなだれかかり
互いに水のやり方を知っている振りをして欺く。
しぶきの一粒ひとつぶに渡る描写と空想を繰り返して
弱った枝を絡み合わせる。

97 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/05/19(木) 02:11:37 ID:/m6i0Vx2
「一片の土地」

このまま教会の門の前に身を固くして
今と信仰の未来との間に佇めば
私は木造の平屋に住まわざるを得ない
切り株の上で薪を割り
川か泉を山中に探さなければ

とは言えそうした住宅でさえ
赤く錆びた西洋の血管を欠いては
その地の上に居座ってはいられない
私の町には致死性の伝染病や
肥えた鼠たちが闊歩した記録はないからだ


燃え盛る門が私をためらわせる
楽土と快適な建築物の保障
真の労働と目的の
あるいは永遠の生命
視覚が音の高低を見
聴覚は神秘の譜面を聴かせる
嗅覚から
味覚へと
はじまって



98 :2/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/05/19(木) 02:12:40 ID:/m6i0Vx2
一組の男女が追放されてから数千年あまり
いまだ
果樹園の悪名高い林檎は輝いている
もし失われた地に立ち返ることがあれば
それは時の逆行に他ならず
私たちの場合は
体を何度も小さく折りたたんで
アフリカの沿岸に帰らなければならない
黒光りするサメと海底火山の沈黙を見計らって
潜水艦の魚群探知機の響きのかなしさの由来を
透明な脳で感じることも出来るだろう

赤い林檎の核に向かって
一片の土地のために


古い昔に手に入れた中世ヨーロッパの
火刑に遭う子供の版木が
焼け落ちそうな門の火に照らし出されている
固定化したイメージのために
ずっとその名を保ち続けていたが

着色されたひとつの木片が
楽園を渇望したふたつの眼球が
映していたものは

台上に生み落とされたばかりの
血の糸を引き摺る
赤ん坊の姿


99 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/19(木) 02:33:41 ID:/m6i0Vx2
「瞳」

視界が奇妙な明滅を繰り返すのは
私の瞼が痙攣しているからなのか
百億歳の眼球が湛える火のせいか


背教と暗躍の愉楽のために
僧侶の身なりをして門を
たたこうか
夜気の中に溶ける視線を受けながら


だが気になるのは門の向こう
背後の鏡面にひびを入れるための
弓と矢の所在

偽りの瞳を射られた者が
閉じた目を開くことは
もしないのだとしても
宝物庫の鎧戸と
眼前の強固な門に今は惹かれる


100 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/25(水) 03:24:01 ID:rhQ7n4nr
100のお祝いに、クラウス・ノミのCDと、小説を色々買いました。

101 :◆kTbUDdAxZI :2005/05/29(日) 21:34:35 ID:RxvEUsty
>>100おめでとうございます^^
わたしも1000までいったらささやかなお祝いに
色々本を買おうと思います、岩波文庫が好きです。

102 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/05/30(月) 22:51:15 ID:Utf2W/Ce
>101
ありがとうございます。私も岩波文庫は好きですね。同盟(?)のような物まで存在するようです。
特別、出版社にこだわらず、文庫本は良い物であると思っています。向こうは1000まで、丁度
あと50ですね。ハイペースです。私は私で、ちまちまやってゆく所存です。ではまた、そのうちに!

103 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/02(木) 03:26:10 ID:3Mz1hB7s
「血の煙」

戯れに詩人の名を銅板に刻んで
気に入りの詩文を思い浮かべる
銅板を噴水にひたして
するどい赤を呼び覚ませば
血は銅板から漏れ出し
吹き上げられて一息に頂点へ
せつなげに赤い水は回り
もう血は帰ってこない

恐らく人の名前は一過性のもの
若い人殺しが未舗装の道路の傍らで
肩で息をしていた二十年前
あまりに美しかった女が舞台の上で踊った夜
新種の植物が植わっていた玄関前
ベストセラー本の書き上げられた朝
戦後
星の数ほどあった殺し

しなやかな糸を手繰ってゆけば
自ら破壊した時が引き摺られて来る
女の細い腕が
土くれに擦れて音を立て
続く錆び付いた鉄の匂い
振り返れば
血煙と都市による断罪があるだろう
血に濡れぬ銀糸の片端は
既に手の中にわだかまっている
私の名前が最後に呼ばれる時!
踏締めて来たはずの
路面がもう柔らかい

104 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/06/04(土) 07:03:49 ID:DcJLsTtW
「土埃」

赤茶けた路面も
あなたと歩けばちがう
岩のかけらにつまずいて
草むらのかなた
池中の蛙を見出そう
夜の瞳を月に濡らして
まばたいては蛍を惑わそう


肉体を越えて陽光は
魂に浸透し
朝のにぶい体を
体内をひと巡りして
唇を開かせる


105 :2/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/06/04(土) 07:04:17 ID:DcJLsTtW

絶えずこの体には
ものの出入りがあって
雀の昂り冷めやらぬ家を発ち
最寄りの種苗店で
花の種を買ったら
もう私の時間が終わっている


ながいながい農道を
取り乱した歩調でゆく
トラックが土埃を立てながら
私の脇をすり抜けてゆく
身に付けた物がこすれ合って
音は立たない
さまざまの物が潜んでいる自覚
戻り来るのは
闇夜の雀の昂りか
水面にうたう小魚の
細い体にさえもその形態を見る事はできない
真夏日の土埃


106 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/04(土) 07:14:07 ID:DcJLsTtW
何らかの誠実さがないと、詩は書けないのだとこの頃思います。
自分の事を棚に上げながら、言う。

折角"随想"と冠したのに、己の考えを述べもしないのは良くない嘘です。
一線を越えた以上、少しずつそうした事も書くべきだ。あくまでつれづれに。

それをやる場に2chを選ぶのはあまり相応しくないと思っていたけれど、
インターネットと言う物が誰にも開かれた場である以上、どこでやろうと同じ。
木陰のそばの噴水も、極めて静かに流れる小川さえも見当たらないのです。
雑踏のような物さえ、あるかどうか分からない。ひたすらに広い。
そしてこれも、丸い世界なのでしょうか。

107 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/06(月) 12:24:56 ID:kYg6Q7p0
風邪を引きました。
毎日ひとつは、トマトを食べているのにね。

108 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/06(月) 12:26:26 ID:kYg6Q7p0
「Angel Falls」

ちいさな川の縁に出て
銀色のアルミ容器に注いだ珈琲を
柄の赤い匙で掻き回していると
川底のあおい藻屑のにおいが漂ってくる
渦巻きをみつめて
一日中過ごしていると
夜空にこたえるように
冷めた黒い渦に
星がまたたきはじめる
太陽が傾いた時に
別の入れ物に珈琲を淹れて
のんだけれど
真っ暗闇はおなかの中心を目掛けて
真っ逆さまに落ちていった
いまごろはカップの中のと同じように
薄明かりの中で光っているのだろうか
シャツをめくり上げても分からないけれど
たしかにそれは落ちていった
川の誘いにこたえずに


天は地に
地は天に


わたしの足は流れに沿って
ここから先の
天使の滝



109 ::2005/06/06(月) 15:00:40 ID:l/VgPgL/
…風邪には、休息が一番ですよ。
ごゆっくり。お大事に、ね。

110 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/06(月) 16:55:20 ID:kYg6Q7p0
>109
お気遣いありがとうございます、申し訳ありません。
今日は日がな一日、読書に耽っていました。たまには、いい物なんですよね。
数日前の雨天の折、帰り道に咲いていた紫陽花を思い出しました。素敵なお名前ですね。

111 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/06(月) 16:57:54 ID:kYg6Q7p0
「夕暮れ」


丘の上にのぼると
遠くに高いたかい塔がひとつだけあって
あとはすっかり視界が開けていて
人間より背の高いのはつややかな緑ばかり
そちらのほうから臙脂色の風が吹いてきて
こうした夕べには
淀みない水面に笹舟をうかべるごとく
なごやかな声をききたいものだ
ちいさな機械にさわれば
そっと歌がはじまり
風がいっそうやわらかになった


112 :◆kTbUDdAxZI :2005/06/06(月) 21:09:03 ID:ldNgNZXy
>>111柔らかくすてきな情景ですね。そのような夕べに在ってみたいものです。
ああ、良い夜ですね。

113 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/07(火) 00:40:47 ID:ZNFOQ5D8
>112
こんばんは。五時頃からずっと、窓のそばに座っていました。
夕焼けの赤いのは、つい見入ってしまいます。
ぼうっとしている内に、何か浮かんで来たり。
どんな形であれ、自然に触れる事は欠かせませんね。

昔の人は、それこそ和歌など詠んだのでしょうが……
私は当分、泥んこ遊びです。

114 ::2005/06/07(火) 00:52:54 ID:/qkYa/wL
…あ、「トモダチの輪」というスレッドにご招待が掛かってますよ。

http://book3.2ch.net/test/read.cgi/poem/1086084558/

出来れば、ご参加下さると嬉しいです。

115 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/07(火) 01:00:20 ID:ZNFOQ5D8
「冬」

雪に閉ざされた町を
薄氷のむこうから覗いてみると
広場に焚き木がくべられて
それで中があたたかい
去年の蝶々が遊びだし
凍てついた軒端の魚が
うまれた池の父母のところへかえる

116 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/07(火) 01:04:29 ID:ZNFOQ5D8
>114
雨さんこんばんは。面白そうなスレッドをご紹介いただきまして、どうも。
困りましたね、残念ですが私には、お呼びするような方がおりません、
お願いする事の出来そうな方も、既に書き込みなさっている様子ですから……
私の番で遊びを終えるわけにいきませんから、傍らよりそっと眺めている程度にいたします。
呼んでくださった方には、申し訳のない事ですけれども。

117 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/07(火) 01:07:08 ID:ZNFOQ5D8
雨さんも、ご親切にありがとうございました。
ご希望に沿う事が出来なくてすみません。顔が狭いと言うのは、どうもいけませんね。

118 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/08(水) 01:49:44 ID:1mZVuvCg
「夕べの天使」


四つの時から夢見がちになった
女の寝床に
ちかごろは天使がやって来る
かれは焚き木を集めて丘に至り
吹き込む風をつかまえ
白い翼を打ちふるわせてやって来る

女はその姿をみられなかったが
窓辺にころがる品々を見て
そのおとずれを知った

庭先に出て
焚き火をして栗を焼いていると
火の点いた純白の羽根がひとつ
夕陽の中に溶け込んで
たちまち燃え尽きたのだった

それから女は
乾燥した小枝を十字にむすんで
そっと枕元に飾るようになった


119 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/08(水) 01:52:34 ID:1mZVuvCg
「秘儀」


死にたがる人のあることも知っているが
そうでない人のことも同じくして知っている
ようやく立ち歩いて
微笑むようになった女の子を残して
去らなければならない父親が
誰かの魂が欲しいと嘆いている
そこへわたしが布ですくった緑青色の魂を
男の頭蓋骨に穿った穴へ注ぎ込むと
かれの眼から
鼻から
耳から
魂はあふれ出し
どうにもならぬことがわかって
娘を抱いてかれは
ただいつものような悲しい顔にもどった


120 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/08(水) 02:41:31 ID:1mZVuvCg
「禊」


川底の白砂に
君の名前を書いて
右の脚で傍点をつけていたら
たちまち身が清くなって
やぶれた思い出も流されてしまった


121 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/08(水) 02:55:02 ID:1mZVuvCg
「恋」


言葉をつかわなかった
ふたりして卵の殻の
カルシウムの殻の中に
閉じこもってしまった
中空に生み落とされた
かもめの卵だった

私にはその白い卵が
溶けてなくなるまで
青いあおい空に没してゆくのを
見届けた記憶があるような気がした


122 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/09(木) 02:36:20 ID:hkZ1SlJW
「西日の射す 店」


君の瞳は
短い詩のなかの
美しい光りを知っている
数行の詩文のなかに
どうして隠れているか
問うことができる
夕陽のなかを飛んだあの
白鳩の
羽毛をまさぐり
燃え立つ心臓をつかんで
ああ
その血をしぼったならば
瞳のなかに咲く

種もいらない
土もいらない
あえかなる花

123 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/09(木) 02:43:29 ID:hkZ1SlJW
ちょっと、題名が格好悪い。

124 :◆kTbUDdAxZI :2005/06/09(木) 09:47:40 ID:8V7PUOFG
こんこんこん
ノックしました


生の続いたことならばあなたのような詩を編んだかもしれない指

その冷たく固く
それから腐れていった指に
触れられる為だけに在ります


125 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/09(木) 22:47:20 ID:mKWPf3K4
真雪さんこんばんは。
二十四時間、門は開かれているはずなので、ノックも約束も結構ですよ。
家主が居るかどうかは、また別問題ですけれど……(n‘∀‘)η

>124は、どなたかを亡くされたという意味なのですか。
あまり、深読みは出来ない性質です。
ですから、それ以上に申し訳ないと感じるのは、
このようにして、ご自身の存在の目的を説明なさる事です。
ここで私が申し上げられる事は、さらに多くの物を見てゆこう、
それだけです。絶対的に未熟で、情報が不足しているのです。

私があまり喋らなかったのは、偏に詩を投稿して、また、詩を読んでいたためです。
立ち並ぶイメージの数々、その印象に辟易したり、感動したりして、
日常の言葉を失うからです。
インターネットに詩作品を投稿する者としては、不器用過ぎますね。
今後は自分の気持ちに折り合いを付けるようにして、
素直な感想を申し述べる事をしてゆこうと考えてます。
あなたは痛烈なイメージを描き出すのがとてもお上手だから、
私は特に、向こうのスレッドでは寡黙になってしまうのだと思いました。すみません。
口を閉ざしていた事を、どうかお許しいただきたいです。

126 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/09(木) 23:26:56 ID:mKWPf3K4
色々と物を言ってみたくはあるのですが、
それが過剰になったりするのは良くないと思い、自縄自縛に陥ってしまいます。
必要なのは、きっちりと物事を分けて考える事の出来るこころ、なのでしょう。
沈黙が最善の策などと言うのは、臆病さのあらわれです。
はっきりしているのは、インターネットと言うものがまだ、良く分からないって事です。
必要以上に、意味を与えすぎている気がします。まるで、原始人のようだ。

127 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/09(木) 23:28:21 ID:mKWPf3K4
意味なくageてしまいました、すみません。

128 :詩人にはまだなれない:2005/06/09(木) 23:46:12 ID:pGdQirW/
今晩は。落ち着いた雰囲気がいい感じのスレですねぇ。


眠り落ちて 夜に迷う
黒いカーテン、夢を散りばめれば

ほんの一時の休息

貴方の望む星屑を
ベッドの周りに降らせましょう





囁いた歌はこれでお終い
もっと優しい明日が来る様に

お休み、よい夢を

129 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/10(金) 01:44:47 ID:hrNOgWgl
>詩人にはまだなれない さん

こんばんは。
スレッドの雰囲気について考えた事がなかったのですが、
確かに、今は人の出入りが少なく、静かですね。
常駐している者には、感じ取りにくいのでしょうか。
ともかく、お褒めの言葉をありがとうございました。

>128
ロマンチックですね。語り部は何か、ただならぬ存在なのでしょうか。
あるいは、言葉のなす魔法ですね。休息のはずが夜に迷うとあるのは、
それが出口の判っている迷宮であるから。何とも悪戯っぽいです。素敵。

130 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/10(金) 02:26:11 ID:hrNOgWgl
詩人ってどういうものなんでしょう。
ヘッセみたいな情熱があれば、いいのかも知れない。

131 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/10(金) 05:07:18 ID:hrNOgWgl
「夢」


浅い夢は
天気雨に見舞われて
小高い丘に
僕はいた
連なる石畳のはるか向こう
青白い朝日に城が映え
木々のそばに
ヒバリはうたう
脇道の紫陽花も
遠くにゆくほど青く あおく
ポケットのなかの
ビスケットをこまかく砕き
すっかり粉にしてしまえば
秘密の狩りをはじめられる
禁猟区住まいの赤茶けた野うさぎたちは
皆盛装して 酒に酔っていた


僕がうさぎの両耳をつかんで
城に帰る姿が見える!

まもなく
夜が明ける

132 ::2005/06/10(金) 20:00:55 ID:YgmlD4tE
…急ぐ必要も、焦る理由も無い、そう思いますよ。
自分の速度で、手探りで、自身に合った関係を築けば良いのだと。

それよりも、体調はもう良いのですか?
睡眠不足は健康の敵、ですよ。もっと身体を労わって下さい。

なんだか生意気な事ばかり言いましたね。済みませんでした。

133 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/11(土) 00:23:59 ID:evpY2fgQ
>132
そうですね、ありがとうございます。手探りで。
どうしようもなく、時間がかかる物だと言う事は理解しています。
そして、すっかり復調しました。ご心配頂きまして、すみません。
近頃は少し暑く寝苦しいので、不眠気味なのだと思います。書は良き友です。
恐縮です、生意気だなんて、おっしゃらないでくださいね。

134 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/13(月) 02:15:25 ID:sSA2L/NC
「収穫祭の頃」

わら束の山が、
はるかな町の灯を覆い隠して、
あらゆる毒も滴りも流れた、
郊外の農用地は、
にわかに色付き、
取り囲む丘の端に、
娘たちが行列をなし、
ひときわ高い十字架に、
鉛色の稲妻は落ち。

麦の刈り穂を携えて、
ひときわ白い肌をした、
名も知らぬ少女がとおく坂道をくだりゆく。
なかばひび割れ、
埃っぽくなった麦畑をあとに。
私はそのずっと奥、
まばらな木々の間でその姿を、
真冬のばらの、
粉雪をかぶった花弁のような、
真珠色の肌にくるまれた、
慈雨と、雷鳴とを、
いちどきに眺める。

稲妻に打たれてみよ、
打たれねば、
この悲しみは分からない。
長く灼かれた耕作地はかくして眠り、
かわって私が氷雨を浴びはじめる。
にがにがしい毒を閉じ込め、
誰一人この心に麦を撒かない。

135 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/13(月) 03:00:02 ID:sSA2L/NC
「渡り」


北東の闇の帳のなかへ
にじむ影と共に
とぶ鳥は
一身に吹雪を受けながら
なぜああも
あたたかいのか
それは
ふたつに分かれた眼で
北極星を見据えているからか
とにかく雁は寒空のなかで
牡丹雪を吸い込む焚き火のようにあたたかい


136 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/16(木) 02:19:21 ID:jAnDwNjI
「離島の青い月」


祖父が肉声を録音したカセットテープが
この度見つかった
今は亡き祖父は太平洋戦争に一兵卒として参加した
武勇伝のようなものはないから
殺したのはひとりやふたり
もっとも
死の際の祖父の弱々しい手には
余分な血液のにおいはなかったが
ちいさな古いカセットのなかには
祖父が月の青さをうたっていて
その場所はどこか南海の
矮小な無人島で
戦後
自宅に戻り来るまで
祖父は無傷のままですんだ


私の住まう家の窓には蜘蛛の巣がかかっていて
細い糸の隙間から見る月は埃っぽく黄ばんでいる
もうしばらく戦いは起こらないだろうから
蒼白になりおどけてみせる月はいない
血の色を見せるのも山の端に燃える太陽だけだ
たとえ私が祖父のいた砂浜に立つことがあっても
星々に取り囲まれた暗く黄色い月が 薄雲よりはかなく
浮かんでいるだけかもしれない
私は赤い夕陽のことをうたうだろう
テープに刻まれた
祖父の静かな詩
離島の青い月

137 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/16(木) 02:28:47 ID:jAnDwNjI
sageチェック忘れていました。

ヘッセの「車輪の下」の、神学校の校長先生の台詞にある、「車輪の下じき」って
何なのだろう、という疑問が先日氷解しました。単に慣用的な表現による台詞だったようで、
校長先生は「しっかりしろよ」、と言っていたというわけだそうです。
実際私は、もっと恐ろしい状況、罪人の処刑に用いられた「車輪」、重罪人をうちすえ、
編み込み、高く掲げるあれの事なのか、と思っていたのでした。よかった。

138 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/17(金) 05:01:49 ID:qaMPfB8m
唐突ですがどうにもやり辛く感じてしまうので、どこか別の場所で、
練習や下積みの様な事を終えてから、改めてここに書いていこうと決めました。
前にも同じような事を申し上げましたが、今度は熟考の末の決断です。
また、その原因が特定のどなたかに因る物では、断じてありません。

と言うわけで、一旦このスレッドへの投稿を控えようと思います。
お世話になった皆様方、ありがとうございました。また、その内に。

139 ::2005/06/17(金) 10:32:43 ID:LZ3VnU1l
…そう、ですか。
少し残念な気もしますが、貴方自身で決めた事なら、反対はしません。
只…納得が出来たら、また此処に戻ることを約束して下さい。

それでは、またいつか、ですね。

140 : ◆TPDxMezcT2 :2005/06/22(水) 01:07:45 ID:JOWV+Ca0
>139
ありがとうございます。
またきっと、このスレッドに作品を投稿してゆく事になると思います。

投稿を控えるのは、あくまで作品に限った話です、
ややこしくてすみません。あまり詩の事が分からないので、
自分なりに研鑽を積むべきであろうなと思ったんです、納得のゆくまで。
満足出来るのがいつになるか分からないので、
とりあえずの投稿ストップ宣言というわけでした。

あまり、細かく言うのは無粋に思われたのですが、
説明不足なのも申し訳ないから、こうして長々と書かせてもらいました。

141 : ◆TPDxMezcT2 :2005/06/22(水) 04:46:42 ID:J4s5uVTo
これ以上眠る事が出来ないから、取り留めのない何かを書こうと思うが、
適した場所も見つかりません。仕方が無いので、つれづれに書いてみる。

こうした独白のような物を、2chに投稿してしまって良い物でしょうか。
取るに足らぬ事を長々と綴るだけなら、Weblogと言う便利なものもあるし、
それを単に日記でしかないと思うなら、博文館の日記帳があります。
板違いやスレッドの私物化になりかねない、危険な行為だと思います。
それに、何かとてもあさましい事のように感じてしまう……
大分前に、スレッドをそのような独白で半ば埋め尽くしていた人を、
見かけた記憶があります。彼は一体どこに行ったのだろう。

"フレッシュ"を聴いていると、何故だか泣けてくる。

142 : ◆TPDxMezcT2 :2005/06/22(水) 04:56:12 ID:J4s5uVTo
とりあえずは、場所をしっかりと弁えてやる事に決めました。
放埓な振る舞いや遣り方は、やはり好ましい物ではありません。
どこか、個人的な場所を探す事にして、当分の間は沈黙いたします。
やはり、ここで多くを語る事の正当性を見い出せません。

143 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/26(日) 20:08:52 ID:8uC3Zf6F
十九歳なんだから、しっかりしなきゃ。

144 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/26(日) 20:18:21 ID:8uC3Zf6F
「秘密の菜園」


はるか遠く
涼しい八月の国に
孤独な婦人が
孤独な心のなかに農地を持っている
夏の光りとにおいがあり
青々としたピーマンが実り
白いおおかみがアヒルをしたがえる
野豚が森のかげに消えてゆく
茄子の畑に交じって
そこには大麻が植わっているのを僕だけが知っている

145 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/06/26(日) 20:22:42 ID:8uC3Zf6F
「今夜」


君が夕陽の名残のなかに溶け込み
僕はそれを一度見つめたきりで
ちらつきだした蝙蝠に視線を移した
その日の夜道の自動販売機の前に
ラフな格好をした二十五過ぎの女が立っていて
女はタバコをくわえていた
あさましく火照るその頬は
雨よけにぶら下がる常夜灯のように
燃えていた
女のまわりには焦げた羽虫の死体がたくさんあった
僕は赤い火の粉がちらつくその小路を見つめる
粘つくアスファルトのうえ
女が遠くなるほど
強く紫煙のにおいがした


今晩は君がその路地を抜けて
靴音を響かせ会いに来てくれた
僕は夜の淵に一匹の魚を放つ心地
あの道を帰ってゆくもののなかで
十六歳はあまりに美しい

146 :名前はいらない:2005/07/02(土) 16:06:09 ID:PijU/T3k
あなたが歌う牧歌はとても心地が良いです。

147 : ◆TPDxMezcT2 :2005/07/05(火) 20:40:12 ID:5MDzExvo
遅くなりまして、すみません。
ありがとうございます。
今後ともひっそり続けてゆく予定です。よしなに。

148 : ◆gr02U.T3.A :2005/07/18(月) 12:50:49 ID:Xxx+TXuh
「次なる歓び」


疲弊した月が中空にかかる、
黄色い薄明かりの下で僕らは、
白い肌を何となくぼかして、
互いのタバコに火を点けあう。
教えてほしい、
汚れたシャツの内側の、
若く脂っぽい心臓の響きを。
生まれる前に知っていた、タバコの味を。
僕はあなたの前髪と、
火のついた赤い唇しか知らないのだ。
僕の手は伸ばせば遠く伸び過ぎる、
街灯にぶら下がる蝙蝠を捕まえる。
かすかな煙は絶えずあがる、
夜空の下で交わる、
無数の隘路に迷い込んでゆく。
いつか夜明けに誰かの前で、
あなたが傷の多い手のひらをかざす時、
あなたは僕の思いを知るだろう!
血の滲む小さな手を愛しいと思うかは、
その人の母性にかかっているから。

149 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/07/18(月) 12:52:57 ID:Xxx+TXuh
間違えました。

150 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/07/27(水) 04:05:21 ID:1tMoAk4g
「晴れた空」


長い雨が続いている。
青白かったきみの肌は、
どこからともなく流れてきた土と砂に浸かり、
いまや、すっかり見苦しいものになった。
なお続く雨のあがる時、
わたしはあらゆる鏡を割ろうと思う。

きみの心は古い人々の約束の地ではない、
乳と蜜ばかりあふれていても仕方がない。
草木の見当たらぬ白亜の丘で、
半裸の神が矢をつがえ、
中空にくるめく魚を射る。
その唇の端に光る、かれの舌は太陽のように赤い。

きみの乳房の下にある、
肌触りのよい心、
まさしく最も脆いもの。
いかなる悲しみにも血を流さず、
あらゆる喜びにうちふるえ、
一矢をもって生と死を分かつ。


151 :2/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/07/27(水) 04:06:12 ID:1tMoAk4g

涙にひたした青いばらか、
杯そのものにわたしはくちづけをしたい。
贈ったドライフラワーのコサージュを、
きみは失くさなかった、
それで自らを飾るわけにいかないと知って。
わたしもきみも、花さえひどく渇いていた。

水平線に浮かぶ真紅の半球にふれて、
雨がうっすらと橙色に染まった水蒸気を立てる。
わたしはきみを元の住まいに帰して、
砂だらけの遊歩道で静かに息づく、
ふと目をおろした先の、
流されてきた紫の、朝顔の花。


152 : ◆TPDxMezcT2 :2005/07/27(水) 04:07:27 ID:1tMoAk4g
「子犬」


楽土や楽園のたぐいは
すでに燃え尽きたり失われたり
いばらと鎖に閉ざされた
しがないリンゴ園と見る向きもあるそうで
それでも多くの人々が
その再興を夢見ているんです
散歩をしながらでもね
たしかに失われたことは存在したことの証で
それを希望にかすかな光りのなか
シードルやカルバドスの香りを追いかける
たしかにさび付いた農園の門は見え
見い出しては潰えして
黒い鉄柵の閉まる音を聴く
だがたしかに
前をゆく犬のちらつく白い尾が
私には見えているんです!


153 : ◆TPDxMezcT2 :2005/07/27(水) 04:09:54 ID:1tMoAk4g
ひっそりこっそりやる事に決めました。
"Don't carry the world upon your shoulder."と、昔の偉い人が言っていたそうです。
もっとも、私は世界の重みを知るに至りません。どうぞよい夏休みを。

154 : ◆TPDxMezcT2 :2005/07/30(土) 03:31:29 ID:/C5F+jmF
「赤い花」


二番鳥が鳴き、
鋭い雲のかけらが紫色にたわむ。
台風のあと、
露の置いた一輪の花が、
うなだれながら曙光に照り映える。
熟れたマメの鞘のようにも、
幼子の指にも見えるその花びらは、
夜通し開きとおしたのか、
すっかりくたびれている。
何に触れようとしたのか、
赤い花よ、
寂しく咲いた朝は、
愛でられたくもなかったのではないか、
香りもさせず、庭の隅に、
重い、重いとつぶやくばかりでは。

155 : ◆TPDxMezcT2 :2005/07/30(土) 03:48:34 ID:/C5F+jmF
「雌牛」


遠くの島は低い雲を戴いて
灰色のやわらかな鞠の上部から
数本の尖塔がとび出している
こちらに吹き寄せる風に
獣の肉を焼くにおいと
泡立つ酒の響きが
林檎や葡萄の香りが交じっていて
ああ僕の仔牛が屠られたのだ
彼女が首に提げていた古い鈴は
肉屋の大きな台の上
頭だけを残した体で
黒すぎた虹彩が滲むつぶらな眼で
彼女は島の何を見たろうか
憂いとともに振るわす首もない
僕にも閉じるべき瞳のないことを
開いたままであろう彼女のそれが
宿る光りを弱めながら教えている

156 : ◆TPDxMezcT2 :2005/08/10(水) 03:55:53 ID:aHagg93R
「浜」


浜は楽しい、
立ち並ぶ傘の色は知らぬままに、
褐色に染まる波打ち際で、
果物とともに寝そべっていたい、
時折波間に揺られながら、
アオサをながめたりしていると、
美麗な貝を掘り出した子が
大きな岩の上で騒ぎ立てる、
赤い水着の。
もっとも良く色彩があふれているのは
浜辺なのではないか、
飾り立てた娘や、
青いいるかの風船に、
灼かれてゆく真っ白い子の肌。
水平線を教えてくれる海、
時の経ったのを、
それとなく伝える海、
夕陽と交わった所に神様が居て、
天馬を鞭打つ音が聴こえたら、
人も烏も住まいに帰ってゆく。

157 : ◆TPDxMezcT2 :2005/08/10(水) 04:36:11 ID:aHagg93R
ELPのEの人が来日するそうな。

158 ::2005/08/10(水) 04:45:27 ID:7+PWZAKG
…キース・エマーソンでしたっけ?

何にせよ、貴方が戻って来た事を嬉しく思ってます。

159 : ◆TPDxMezcT2 :2005/08/10(水) 04:59:19 ID:aHagg93R
そうです、キースエマーソンです。
おはようございます、お久し振りです。
ちなみに、私はキースエマーソンではないのですが、念の為に。
何だかわがままに、来るだの来ないだのと言ってごめんなさい。
一寸忙しいのですけれど、今後も寄らせてもらうつもりでいます。
碌な物が書けない人間なのですが、よろしくお願いします(μ_μ*

160 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/08/17(水) 03:07:46 ID:b6sLlGPe
「マルメロ」


曇り空の下を当て所なく歩いて
胸の前に紙袋を抱え込み
時折立ち昇る香りをかいでいる
雲の裂け目にある灰色の空は
どうしたことだろう
「切り落とされた果実」のような
痩せた娘が通をゆく


誰かの背中に一身を預けるように
疲れた体を野原の柔らかい草の上に横たえ
少し経てば樹木のそばに死なんとする

もし私の死が訪ねて来たら
その黒い翼に乗って私はゆきたい
「生まれたばかり」の草原へ
伸び盛りの青い草が
次第に朽ちる体を覆い隠すだろう
やさしい草むらのある所



161 :2/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/08/17(水) 03:08:31 ID:b6sLlGPe

誰かに手を引かれて歩いた市場を思い出す
帰り際に訪れた八百屋のテントの中で見た
綺麗にぬぐわれたマルメロの大きな実
たちまち切り刻んで腹に収めるものではないらしく
脇にあったジャムを売ってもらったっけ


あぶく銭に埋もれた清浄な街路から
その手で導いて欲しい
「切り落とされた果実」とともに
私は瓶の中で静かに融けてゆく


162 : ◆TPDxMezcT2 :2005/08/17(水) 03:10:55 ID:b6sLlGPe
"Llorando"、いいなあ。ロサンゼルスの泣き女。

163 : ◆TPDxMezcT2 :2005/08/21(日) 03:28:15 ID:NX2URojo
手持ち無沙汰なので、
気に入りの本の気に入りのページを、お目に掛けます。
これ一度しかやりませんので、お見逃し願います。誰となく。

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>              ボヤイ
>
> トランシルバニアというと、ルーマニアのハンガリー人地区
>で、ドラキュラのふるさとだが、そこに数学とバイオリンの名
>手の若い中尉、ボヤイ・ヤノシュがいた。パガニーニを弾きな
>がら、剣で相手を倒し、ワインを飲んだなんて話もある。
> 彼は非ユークリッド幾何を考えて、父の友人のガウスに知ら
>せたが、ガウスはすでに知っていて、相手にしなかった。数学
>に挫折したボヤイの血を湧きたたせたのは、ハンガリーの革命
>だったが、それもオーストリアの大軍に押しつぶされた。そし
>て、数学と革命の夢に破れたヤノシュは、トランシルバニアの
>森に淋しく死んだ。妻も父も、彼を見すてていた。

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森 毅 著・安野 光雅 画「すうがく博物誌」は、「ボヤイ」の項ヨリ。

164 : ◆TPDxMezcT2 :2005/08/21(日) 03:29:06 ID:NX2URojo
"革命"と言うのは、1848年から1849年にかけての、
一連の民族運動の事のようで、結果最初のハンガリー内閣が誕生しましたが、
あえなくオーストリアと、ロシアの前に打ち倒されました。
なぜかこのページからは、ただならぬ詩情を感じます。
漸く写真技術の確立したころ、19世紀。
ネガとポジのあいだで、色んな事柄がひしめきあっていました。
密やかな囁き声を、煤煙の海に浮かぶ月を、
高く積み上げられ、タールの臭いのする土嚢の透き間から覗き見るような、
後ろめたい心地良さ。明治、ブルガリアヨーグルト。

森さんの文体は詩的な所があり、
安野さんの素朴な挿絵は、好奇心をくすぐります。
肩の力を抜いて読める、童話屋さんの本です。上下巻にわかれています。
そして、何気なく引用してみたことを深くお詫びします。誰となく。

165 : ◆TPDxMezcT2 :2005/08/30(火) 02:15:56 ID:AcOBTnSK
「毎日」


庇のない停留所のベンチにかけてバスを待つと
代わりに雨が降ってきて
どこかで誰かが泣いているように思われる

神様の燃え盛る虹彩に
二階建てバスや食料品店の建物や縞馬のたてがみ などの
諸物がしっかり映り込んでいるからには
薄茶色の虹彩の少女のそれの中に
等しい空間が広がっていることを
神様にだって否定することは出来ない
時折温度の定まらない涙が雨となってそこに注ぎ込むのだろう
僕にも目の前の小道が見えなかった事がある 涙のために
雨よけのないバス停は
そんなおぼえのある者が設けたのかもしれない
毎日すすり泣く人はこの街にいないが
いつか 曇り空のロンドンを訪れてみたいな
巨大な氷塊の浮かぶ洒落た海もあれば
熱砂の海のただなかをナイルは今も這いずっているという

いずれにしても乾く暇のない
涙を湛えた美しい眼球の中


166 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/09/06(火) 03:49:19 ID:Ay8bT4zF
「時間」


揺り椅子に掛けて
屋根裏の小窓から通りを覗くと
そこには激しい雨が降る
連日曇り続けた空より
堰を切ったように
騎兵達が突進する合戦場の地鳴りのように
大きな音をたてて町中の家々の窓を叩く雨
こうしてあらゆる感覚の触手を体内に格納して
机上の蝋燭のうつろな炎ばかりを見つめていると
王国の夢は叶ったように思われるが
まさしくわたしの命は残り少ない
黒い馬にまたがる一団がやって来る
わが首級をあげに

晴れた日は官吏の目が恐ろしい
かれの手からこぼれ落ちる銀貨は
ごみ棄て場から帰ってきた猫のように
悪い油のため虹色に光る

“生まれてのち
社会の歯車のひとつとして
精力的に働き続けて
すっかり痩せ細ってしまったら
流れる物は血液でさえも
檜の揺り椅子に任せて暮らし
残った時間を孤独に過ごす”


167 :2/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/09/06(火) 03:50:41 ID:Ay8bT4zF

そんな人生は辛いだろうが
段々若返ってゆくと言うのも恐ろしいな
萎んだ鬼灯が生まれ来て
途端に文字通り親を介護し始める
子には漠然とした言葉が次第に戻って来て 老父母をあやす
それが記憶の継承
人が今と同じだけの寿命を逆さに使い切る
そんな世界には瀕死の親のための保育器が開発され
社会はそれの低年齢化に苦しむだろう
医療技術はそれでも進歩し続けて
人間を逆さの極限まで連れてゆく
ふたつの細胞に至るまで
保育器は裁断し分解し
それでも雨が降るだろう
官吏の手から落ちる
銀貨のように鈍く光り
鎧戸を打ち破りそうな雨が

なんだ 結局死の瞬間には
孤独なのに変わりはないのだ
肉体か精神か その程度のちがい
わたしは老翁
或はたったふたつの孤独な細胞
火の気のなくなった小部屋のなかで
居心地悪そうに呼吸をするばかり


168 ::2005/09/06(火) 04:01:07 ID:tZQOJ6Tx
こんな深夜に…って、私もですね(笑)

台風には充分気を付けて下さいね。

169 : ◆TPDxMezcT2 :2005/09/06(火) 05:58:56 ID:Ay8bT4zF
>168
ご心配くださってありがとう。
今のところ、致命的に降られているというわけではありません。
もっと言えば、私は比較的安全な地域に居ます。
ですが、甘く見ていると危ないと言うのは本当ですね。
雨戸はとりあえず閉めてあります。
日本と言いアメリカと言い、大変だなあっ。

早起きは三文の特と言いますが、
睡眠不足で五両ばかり損をしそうな今日です。
私は時たまこうして眠れない事があるからいいのですが、
雨さんも体調にはお気をつけて。

170 : ◆TPDxMezcT2 :2005/09/06(火) 06:22:17 ID:Ay8bT4zF
>168
体調もですが、台風にも気をつけてください。
言い忘れるところでした。どんより曇ってます、今朝も。


花の香りをふくんだ微風でなく、
台風とはどんなにして向き合うべきなのだろう。
人とそれとの戦いの歴史がある場所に赴くといいのかも知れない。

良し悪しは別に、破壊的なイメージばかり抽出して来た気がするけれど、
また別の顔があったりするのだろうな。彼には、目があると聞くし。
こう言う事は、スーパーのちらしの裏ですね。それでは!

171 :名前はいらない:2005/09/14(水) 20:47:55 ID:g/o3iPSH
夜を愛してるよ。

 夜になるといつも私はひとりになれるからね。

夜と愛してるよ。
 
 ひとりになると君を思い出せるからね。そぅっと。

夜を愛してるよ。

 君を思い出すと私は笑えるからね。


夜を愛してるよ。
だから昼はだいきらい。


172 : ◆TPDxMezcT2 :2005/09/16(金) 04:11:47 ID:H96DTrMr
>171
夜は取り敢えず、地球の片側のあらゆる機構が停止しますから、
そうして自分の心を見つめるには最適の時なのでしょう。
最後の行が深読みさせますね。

173 : ◆TPDxMezcT2 :2005/09/16(金) 04:24:13 ID:H96DTrMr
最近、童謡が面白いです。サトウハチローとか北原白秋とか、野口雨情とか。
白秋がそんな事の論文(のような物だった気が。)を書いていたりして。
どれもこれも味わいがあって、いいな。

174 : ◆TPDxMezcT2 :2005/10/11(火) 04:55:46 ID:S2Tt9TmE
「秋雨」


「煙るような秋雨」が降る夕闇のなかを
ちいさな花がもう僅かに残るばかりの
金木犀の木から放たれる香りは
濡れながら迷走する
誰かの鼻をくすぐることも忘れて
ぬかるんだ庭土の上を

濃い影になった山々の頂を掠める
わずかな残光もまた
屋根瓦や楓の木や
少し媚びた甘い匂いを
誘うように赤黒く染めつつ
空と峰の狭間に段々と消えてゆく

たまらなく冷えて来れば
投げ出していた足をそっと戻して
立ち上がって僕は縁側を後にする
罅割れた土壁を伝い
ささやかな雨音を聴いて
あるかなきかの光りに背を向けながら

175 : ◆TPDxMezcT2 :2005/10/11(火) 05:03:21 ID:S2Tt9TmE
随分間が空いたなあ。
松茸、銀杏、薩摩芋。ごちそうさまでした。

176 ::2005/10/11(火) 05:31:12 ID:eecnNLvt
…夜と言うより、朝ですよ(笑)
秋を満喫なされて居る様で、なによりです。

177 :Mana魔名:2005/10/12(水) 18:59:53 ID:9H2KJVmx
千夜一夜の花園で、夢より素敵な愛を綴ろう
この手ですぐに抱き締めたいのは貴女の背中
不随意な孤独感さえ唇ごと奪ってしまいたい
回想する度に願う、安らかなる永遠の眠りを

178 : ◆TPDxMezcT2 :2005/10/14(金) 02:17:15 ID:uGz31snF
>176
近頃早寝早起きを志していますので。
そう言いつつも、今夜はこれから眠るところです。
秋ですね、紅葉も楽しみです。今年はまだまだ。

>177
ふと気付いたのですが、縦に読むといいですか?
そうして文字を整えてゆくのは簡単そうに見えて、
語彙と豊かなイメージがなければ、難しそうですね。

179 : ◆TPDxMezcT2 :2005/11/01(火) 01:56:20 ID:zJumA+9u
「蜥蜴」


君の言葉はやさしくひびく
七色の光りを含み
糖衣に包んであるようで
反芻する時の口当たりもいい

落葉を巻き込んで吹き上がる北風
裸になった街路樹のうろ穴から
蜜蝋でできた蜥蜴の置物が
パン屋の白い粉をかぶって
十二月の街に繰り出した

180 : ◆TPDxMezcT2 :2005/11/01(火) 01:57:16 ID:zJumA+9u
「魚」


猿のかたち
パンのかたち
雲がさまざまな形態を取るのは
僕らの本質に関わる事
君のお尻のかたち
秋空に浮かぶうろこ雲は
大きな魚の姿
茜色の西の空の
溶けるバターのかたち
あるいは青海の波間に
疲れきって揺られる 渡り
雲のように日々の糧を求めて
鳥の姿を取ってはそのつばさを休める

空も海も
触れることの出来ない奥行きそのものに
潤んだ青さを湛えているようで
縦に横に広がる尾びれを振るっても
つばさのある白鳥の視覚を得たとしても
高い空に留まるとしても
その青さに届くことはない
白抜きの体に困った様な目をつけて
漂っている所を君に見つけてもらえるだろうか

181 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/11/25(金) 04:22:19 ID:GUSEFV7U
「海」


ちいさな台のうえに
ガラスの立方体が展示されてい
それはたいへんに分厚い
水槽と通路を隔てるガラス
11月の水族館のなかは
心なしか体も冷えるようで
頼りない照明のそばに
あなたは静かな白い息をつく

もはや
死の姿は遠く離れて判らない
かつてはどこそこでどのように
いくつくらいの僕が死んでいるのだと
興奮気味に描いてみたのに


182 :2/2:2005/11/25(金) 04:22:59 ID:GUSEFV7U

今となってはすっかり
ふしぎな思いのとりこ
心からはるかに遠ざかって
広がる暗がりのなかで
殺害してきた自分が骨になっているだろう
時間と亡者だけが飼育係のように
透明なガラスの向こうで手を振りながら
ウエット・スーツを纏って
死の深みへ沈下していく

暗くて深い海と
人の心を隔てるものは
確かに存在していて
あなたのか細い手首が
眠りを誘う深淵を求めて
新しい傷を重ねていくのだとしても
他ならぬあなたの体を
血管は縦横に走っているから

183 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/11/25(金) 04:24:27 ID:GUSEFV7U
「飛行」


暗過ぎて空の高さも判らない夜
シャワー室から聴こえる幾枚かの壁や
戸板を隔てたかすかな水音にまじって
少し甲高い鼻歌が届いて来
蝶々の時計が真夜中を告げ
時折大きな水のかたまりが
小麦色の肉体の表面で生まれ
硬い床の上にぶつかっている
あのドアが開いたらどうなるのだろう
和することのない音が奔流となって
石鹸の香りを孕み
砕けたコンクリートを押し流して
彼女の代わりに出て来るかも知れない


184 :2/2:2005/11/25(金) 04:24:59 ID:GUSEFV7U

ちいさな部屋の中に考えを巡らせながら
同時に人通りのない夜の道を
酔っ払いが寄り掛かっている街灯を
建物の三階の自室の窓から見下ろして思う
実にさまざまな人が
それぞれの時間を持っているのだと
闇に迷い飛ぶ蝶をつかまえ
肥えた腹を割くと琥珀色の花の蜜がにじみ出て来たので
指先をつかって樫の食卓になすり付ける
これほどの殺戮も許されているのだと
悲しみ 悲しみを考える為にある
それはとても長い時間
死が悲しみに紛れてしまうほどの
あるいはとても僅かな時間
誰も選ばなかった 時間と融合するということ
そして取るに足らないことなのか
鋼のぜんまいで時の蜜を吸い上げる
澄ました金物の蝶々にしてみれば

185 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/11/28(月) 03:33:16 ID:pLdGq+go
「紅葉」


つぶらな雨滴が散々に叩きつける大雨の朝
黄色い粒々を踏み越えないように注意しながら
薄暗い私鉄駅のホームで
廃墟のごときその有様を
駅の小汚さについてひとつひとつ数え上げる
コンクリートにこびり付き黒く変色したチューイング・ガムを筆頭に
埃っぽく煤けた天井
透明度の極めて低いこわばった窓
電車は物見遊山の僕を待たせる
特急と銘打たれた
色彩のはっきりしない車体が
逃げるように過ぎ去る


186 :2/2:2005/11/28(月) 03:33:48 ID:pLdGq+go

思えば野生生物の足跡は
機関車のためのレールのように直情的で
たまに立ち止まって木の実を齧る
あまりの迷いのなさに
つい僕はモデルガンで狙いをつけたことがある
見た目よりもずっと軽いそれの
プラスティックの握りの感触をおぼえているが
野うさぎはそんなことや
赤く染まった楓の木に頓着せず
奇跡的な長さの直線を描いて
白い雌うさぎの肥ったお尻を追い掛けていく


ああ思えば
燃え立つ十一月の嵐山は
僕がそれと照準をさだめてから
紅蓮の熾き火となり
次の年に向けて消し炭となり
時折誰かがそれで銀杏を焼いたっけ

西に反り上がった雲の端から垂れてくる無数の雨滴のなかで
遠くからでもそこが
火勢を弱めてゆくのが判る
僕のまっすぐな視線に射抜かれながら
今年の嵐山の秋もおわる

187 :名前はいらない:2005/11/28(月) 03:35:27 ID:pLdGq+go
落ちるとこまで落ちたなあ。と言うと聞こえが悪いですね。599だそうな。

188 : ◆TPDxMezcT2 :2005/12/12(月) 03:05:09 ID:iLKw+36A
「沈黙」


鏡のなかに視線を彷徨わせた時が過ぎて
君は自ら髪を編めるようになった
小首を傾げて目をつむると
木陰に息づくよりもやすらかに
白い指が髪のそばへ這い寄る

私がいつかたおれてつけた
雪の窪みはすでになかった
真っ白い鋳型は心を複製する
耐え難い沈黙と無重力のなかを
音のない産声でやぶってみせた

われわれの姿が描かれるカンバスを
ひとりで抱えるのは骨がおれる
ほんの僅かな細胞から
幾本かのアルミチューブのなかから
生まれてきたはずなのに

表裏の色彩を見せて
くるめいては落ちる紙吹雪
君が眠っていない夜は
悩ましい芳香が立ち上る
果実を踏み潰しながらゆくせいか

青ざめた相貌は発光する
心臓につながる舌の先から
白煙をあげる血液がしたたる
私はそれを両手でうけとめる
深々たる夜気のなかへとどけるために

189 : ◆TPDxMezcT2 :2005/12/12(月) 03:08:39 ID:iLKw+36A
12月12日はプレッツェルの日かな。皆様良いお年を。

190 : ◆TPDxMezcT2 :2005/12/15(木) 01:50:11 ID:7XRZ9ve+

「暑い国」


荒涼とした沙漠の
どこに落ちるのか
一滴の涙は

そのなかを通り抜ける光りのように
出自が明確でない
透明でかすかな塩の味がしても
浜辺を越えてとびかかってくる波はない

僅かな青いしずくのなかにも
不可侵の聖域があって
まだ日の高く昇っていた頃
美しい体を風にあおられながら
抜け落ちる白い羽根を
天使は見送っていた

俄な砂嵐に紛れて
幻はいずれ 砂丘に埋もれることになる
黄昏 干上がった小村のはずれにみつけた
群青色の水脈


191 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2005/12/16(金) 03:15:39 ID:xE7J5pP0

「随想」


自分の言葉を捜して 狭い穴のなかを這いずる有様は
観察者も当人も 盲目的になれていい
万人の胸のなかに言語化されていない詩想が渦巻いていて
それが暴発する時 引き裂くのは
ゴム質の産道でなく 他ならぬその肉体だから躍起になる
弱った腕をのばして ペンを取る

*

執拗に「自分の言葉」を求めるのはなぜなのか
憧憬的な同化の願望から 無意識的に
他者の文体に入り込んでそのなかで酒を飲む
すすけたバーをみつけて そこでくだを巻く
日曜の夜が来るまで飲み続けて
サイフに金がないので目を覚ます


192 :2/2:2005/12/16(金) 03:16:19 ID:xE7J5pP0

他人の文体を借用して詩を書き続けると
本能が一種の禁忌を喚起させるのか
背徳的なその美から逃れようとして
肉体は「自分の言葉」の探求に入る

*

胸中の詩想を告白するには
金のかからないものの準備だけが大変で
インキと紙だけは事欠かない
過密な言葉の世界を巡って
詩人達は不即不離の立場をとるだろう

僕と言えば冷え込む沈黙のなかで
声をあげることも出来ないほど疲弊して
今日明日にも答えをほしがっている
パンがなくて十日
水がなくって二、三日
その「答え」がなくたって
五十年は生き続けるくせに


193 : ◆TPDxMezcT2 :2005/12/16(金) 03:17:32 ID:xE7J5pP0

「光り」


子供が真っ黒いコーヒーを散々に飲む
子供は女の悪魔が産んだ ちいさい悪魔だから
言うこと聞かず 何杯飲んでも平気だが
悪魔は型通りの話に馬鹿正直なところがあり
夜中になっても血走った目を見開いていた
しきりにつぶやきながら 「灯りを消して」


眼球を覆う 薄い瞼
幼い頃にとったカフェインのせいで
どうしたって目玉は開き続けているから
それなら街の灯が手ごろで やさしい
僕が最初に見た光りはおそらく
分娩台を照らす蛍光灯が投げかけていた
初冬の雲に照り映える
正午の光りは あまりにつよい


194 : ◆TPDxMezcT2 :2005/12/20(火) 03:57:06 ID:8usxCcZM

「見えない火」


なんとつめたい空気
凍える空間であろう
金色のグラスはもう汗をかかない
時間を裁断する天使が
永劫の沈黙を
氷期のはじまりを教える
幾重にも重なり
網膜に焼き付いた影が
「時」のなかへ帰っていく

卓上の蝋燭の炎が いま


195 : ◆TPDxMezcT2 :2005/12/20(火) 03:57:51 ID:8usxCcZM
「誤差」


一分一秒の遅れなら取り戻してやろうという気になる
たとえ一時間でも
明日がくれば帳消しになっている
ただ きみの明日が来さえすれば。

一億五千万の 一秒の集積
あるいは十億 二十億 六十億?

五分寝過ごして
新幹線を見送ってごらん
無理な出来事でジェイアールが止まった時の
ニュース・キャスターの言葉を思い出してごらん、
また クルマや飛行機を。

手のひらにある琥珀色の破片を
もう一度ながめてみるといい
ほんの僅かな誤差に腹を立てて
きみの恋人だって
一分と待たずに去ってしまうんだから。


196 : ◆TPDxMezcT2 :2005/12/22(木) 05:55:10 ID:frs3syew

「冬の都会」


寒気を増した都市の
うつくしい十二月のなかで
死を願うのは女神だけだ
雲からひとつかみの雪がばら撒かれて
真白いさざんかの花が落ちると
女神に安住の地はない

青く凍った高速道路のうえを
名もない街に向けていそぐ
軌跡もなく 時折
太陽の方へ影をおとしながら
名も知らぬ次の街へ
さざんかの白い花を咥えて


197 : ◆TPDxMezcT2 :2005/12/22(木) 05:55:41 ID:frs3syew

「春の色は」


秋のあいだに熟れた
真紅の夕陽が消えて
都会もその住人も
一様に白く染まった
あらたまったかのような心を抱えて
潤む満月さえも異質に見えるころ
来春の色彩について思案せよ


198 ::2005/12/25(日) 07:37:33 ID:svTIvJK9
…Merry Christmas。

199 : ◆TPDxMezcT2 :2005/12/25(日) 22:51:29 ID:mg950wId
はい、メリークリスマス。
オフロの帰りですが、星が見えませんね。

200 : ◆TPDxMezcT2 :2005/12/29(木) 03:21:12 ID:JhQ1vIYM

「水」


はげしく鞭うたれた
女の白い背中が
見知った噴水の底に沈んでいると
僕はその水を飲んでみたくなる、
不安そのもののように
嚥下するたびこの魂に
やわらかく接触し
赤く あるいは黝く腫れあがった
乳白色の皮膚に残された傷跡とおなじ、
魂の切断面に
かの霊水が染み渡るのを想像すると
夢から醒めるのも厭わしくない

白の貝殻の埋まった噴水の淵に
そっと手をかける
女は死んでいるものとばかり思って。


201 :saracen ◆TPDxMezcT2 :2005/12/30(金) 04:10:40 ID:8n/Hg9pg
何故そうであるかは申し上げるべくもないのですが、
矢張り一寸忙しい為、書き込むのを控える事にいたします。
衝動的にそう申し上げているのではなく、必要に迫られたが故です。
自意識過剰と言う例のあれかも知れませんが、
御覧いただいた皆様、九ヶ月と少しの間、ありがとうございました。
詩を生み出す事の難しさと楽しさを、味わって来たつもりです。
雨さん、ちょこちょこ書きに来てくださって、嬉しかったです。
二度目の正直と言う事で、皆様良いお年を。また、どこかで。

202 ::2006/02/06(月) 22:08:57 ID:z02/SuIt
  ☂
(,, ・∀・)ノ軽く保守。帰れる場所は必要だから。

203 : ◆TPDxMezcT2 :2006/02/26(日) 19:28:47 ID:CrlI3vR8
おお、ありがとうございます。残ってましたね。また、その内に。

204 : ◆TPDxMezcT2 :2006/02/27(月) 02:12:14 ID:MQLuk+iR
で、今後はぼちぼちやってゆこうと思います。

205 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2006/02/27(月) 02:13:17 ID:MQLuk+iR
「孤独」


町に繰り出して
喫茶店のお茶を飲むと
ワラかごのなかの食器が
矢鱈目に付いて、
寒さや暑さを
忘れる思いをする
町のなかで
存在は透明になる
コーヒーのカップを
悠長につまみ上げるほどの
透明に

十月の青空のように
どこまでも透明になって
何か本当の自由の味、
名状しえぬ
快さを舌に感ずる、
存在が透明になる時は
人間の眼が涯しなく青くなる時だ
色素を失う過程だ
ロマンス・グレーの二十代だ

206 :2/2 ◆TPDxMezcT2 :2006/02/27(月) 02:14:30 ID:MQLuk+iR
透明になって願うことは
赤みの差した頬に、
白い肌に触れることだ、
成しえないことの淋しさだ
町外れの森のなかでは
思いもよらぬことで
晩夏のあの時は
再び聴きえぬ鐘の音を
風が吹き過ぎて残った
繁茂したヤブガラシの
音のざわめきを
きいていたかった

孤独のなかでしか
私には他者を求めえない
群集がなければ
存在は透明にならない
町にいることは
永遠の中心にいることだ
永遠のなかで孤独を感じることだ
人々のたわむる町角から
遠ざかる時
それがあなたの黒い髪の毛を
見つけた時だ
一人でいる時
私は本当に孤独でない、
存在が顕現する時、
茶色いその虹彩を感ずる時は。

207 :名前はいらない:2006/03/01(水) 11:28:10 ID:mZmtgl6f
オカエリナサイ。マタ カイテクダサッテ トテモ ウレシイ。

208 : ◆TPDxMezcT2 :2006/03/02(木) 00:35:41 ID:LpdjaSBd
ありがとうございます。お待たせしてしまいまして申し訳ありませんでした。
と言いつつも、ろくな物を書けずにいるままで、そちらの方こそ申し訳ないことですね。
お言葉を頂戴できますと、大変励みになります。今後もひとつ宜しくお願いします。

209 : ◆TPDxMezcT2 :2006/03/02(木) 00:38:40 ID:LpdjaSBd
>>206の"群集"は誤変換で、正しくは"群衆"ですね。
最初からワードで書けばいい物を。

210 : ◆TPDxMezcT2 :2006/03/02(木) 00:42:18 ID:LpdjaSBd
わけがわからぬまま、間もなく一周年なのですね。呆れた。
今後はもう一寸、真面目にやってゆこうと思う。
それはつまり、諸物と諸相への考察の深度を深めるという事柄において。

211 :1/5 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/02(木) 23:58:03 ID:efex54VI
「胸を病んで」


澱の如き
雲の切れ間から
黄金色の舌が降りてきて
百万度の熱を
かすかに感ずる
はげしい熱
の記憶を
見つめる
白梅の幹に目が行く
炭のように黒く
曲がっていて
燃え残ったのはその木だけ
時のなかに逃れて
なまめかしい傷を
おもう

212 :2/5 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/02(木) 23:59:07 ID:efex54VI
サーカスの桃色のテントが
くずれて
白塗りの道化が
下敷きになって
その死に顔は
たとえば
詩のなかの死んだ行よりも美しい
人は
時を知る生物だという
みずからの郷愁を
馬の黒い眼のなかに見出す
かれらの足はとても速い
あぶみのなかった昔
戦車を牽かせたこと
または
ガリア人がつまみあげた
豊かなブドーの房の
重み
これらの危ういバランス

213 :3/5 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/02(木) 23:59:48 ID:efex54VI
歴史を記録する動物の
腕や足が
欠けてゆく思いがする
悲惨の味を知らぬ
セッコウをかためた記憶
確かなものは
なめらかな腹部の曲線だけ
魂も肉体も観念の世界に
生きていて時折
境界を越えようとする
諸物に
おどろく

214 :4/5 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/03(金) 00:00:31 ID:efex54VI
少なからず
みずからの尾の味は知っている
悲惨とは無縁の
危うい境界、
均衡の妙味を。
紅蓮と白蓮の
咲きみだれる
水辺に憩った
高台の廃村を仰ぎ見た
幾条もの白煙が蛇のように
帯状の雲の底に触れている
観念の世界は雲のうえにない
雲そのものが
蛇の住むところだ
蛇の
赤い舌の所在は問えなくなった
ものを口にしなくなって久しい
ガケを這い降りてゆくと
砂漠があり
昼間はたいへん暑い
野生のウマの白い骨があり
無数の岩石が転がっている
卵の殻が

215 :5/5 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/03(金) 00:01:07 ID:efex54VI
道化の体が燃える、
かれは時の涯てに着いたのか
あるいは青銅を巡る旅の。
君は胸を病んで、
旅のさなかに。

砂上に
長い轍があり
今は何も住んでいない
もう眠っていい
今年は随分暑くなりそうだ
眠れ
盲いた蛇
眠れ

216 : ◆TPDxMezcT2 :2006/03/05(日) 02:52:42 ID:O530DQ3F
「Vertigo」


廃病院に子供がいる
どこからともなく
旅をしてきて
六時の鐘とともに
テーブルにつく
海塩のうすい緑が
夕日に映える
「色彩」の謎が
解けるように思う
時にめまいがする
反射の世界では
詩文のなかでさえも
危ういきらめきに見舞われる
虹色のエビの卵
黒い髪の娘が
青いままのトマトを
日没のアメリカの畑でかじったりしていた……

年長の子のコップのなかで
乳緑色の乱反射がおこる 彼女はサケノミだ
舌足らずの双子の
姉のほうが
妹の抱えるジャスミンをとって
火にくべた

地中海の
アサイラムの

優雅な沈黙!

217 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/05(日) 05:08:04 ID:hBRnJnLo
「神々のあそび」


宗教的な感覚を
持っているということは
ひとつの箇所へ向かおうとすることだ
諸々の存在が
一点に集中しようと
意図することだ
永遠のすがたを借りて
生れた神は
今何を考えているか
未だに
ひとつの存在へ
化けることを
思うので
微弱な電気ははしり
人々を闘争へと駆り立てるのかもしれぬ
奉ずるものがないということは
存在そのものが
信仰の対象になって
いわば
存在が永遠になるということだが
そうなるともう
それは人間ではないので
銀色のサイセンを投げつけながら
閉じかけの門の奥で
カシワ手をうつ

218 :2/2 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/05(日) 05:08:45 ID:hBRnJnLo
一日のうちで
五度も
信仰のことをおもわない
永遠から涯てしなく
逃げるふりをする
モモの枝を境内の庭園からぬすんで
桃色の生殖器をながめる
深みをのぞこうと
意図しないだけ
このモモは神々にちかい
御神体がモノであることも
うなずける
夕日をふちどる
ブルーのなかに
死人の頬のつめたさを思う
厳しい冬のなかで
鶴がおどっている
祝い事と称しては
そのツルもたべた
涯てしなく永遠は遠ざかる
彼女がタバコをのめばのむほど、
酩酊するほど、
自らのことを忘れるほどに。

219 :epilogue ◆TPDxMezcT2 :2006/03/05(日) 05:14:58 ID:hBRnJnLo
付するものか迷うが、法に触れる事は犯しておらず、基本的に菜食者です。
また、タバコも酒もしないつもりで居る。一介の阿呆。

220 :1/2 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/11(土) 01:39:01 ID:r/TsBmas
「ミモザの石鹸」


もう愛のことを
考えなくなった
消耗品の価値についてばかり
頭をつかって
目は閉じたまま
昼夜の静寂は
卵殻を打ち破ろうとする
鳥に似ている
人の観念も卵で殖えるものだ
殻の大きさは一定で
硬さだけが変化する
色とりどりの
成型済みの石鹸のように

221 :2/2 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/11(土) 01:39:40 ID:r/TsBmas
おもてに刻印されたロゴマークを
盲目の指でたしかめると
冷ややかな凹凸が
機械仕掛けの何者かを象徴しようとする……
石鹸の卵色の泡のなかに
神が住まっている
ここは永遠に薄暗い
犀の皮膚のような窓ガラスの下には
針金が走っている
白人の気持を捨てないといけない
夜の闇は卵の暗黒だ
レビストロースを読むべきだ
アジアの澄んだ沼で
透明なエビをすくわなければならない
インドの古い汽車にのって
帰らなければならない
鳥の鳴き声のような
ギンヨーアカシア
の森をあるいて


222 : ◆TPDxMezcT2 :2006/03/11(土) 01:42:29 ID:r/TsBmas
今気付いたのですが、ギリギリアウトな長さの物を二つに分けて投稿しなければならないのは、
意外と辛い。しかし、行数に制限を設けないといけないのは仕方ない。のかな。文句はありません。

223 : ◆TPDxMezcT2 :2006/03/17(金) 11:15:21 ID:tXMTxr8R
今度から題名を名前欄にいれてみようと思う。怪しい試み。

224 :野鴨1/2 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/17(金) 11:16:33 ID:tXMTxr8R
聖俗を分かつ線を
いとも楽にまたぎ
野鴨の血の滴りを追って
冬の村に犬が入って来る
夜のなかでも彼の瞳は
光りを喪わない
蛍のように瞬く微光は
誰しも湛えているものだが
一元論的な世界では
人は皆盲いている
耳だけは良く聴こえて
麦とともに生きている

聖者の木像を拝むのは
イデオロギーを覆すためでなく
革命のためでもない
シャクナゲ色のアガペーに
浴したいとおもうだけだ
愛の色彩を心に感じたいからだ
棄てられた炉に種火をいれなおして
眼窩から火の粉をほとばしらせてみたいだけだ

225 :野鴨2/2 ◆TPDxMezcT2 :2006/03/17(金) 11:17:56 ID:tXMTxr8R
熟れすぎて瘴気をあげる
肉色の桃の果実はもうたくさん
のら犬のような
貧しい麻の衣をきて
天井のモザイクをとおってくる光りをおもう
手はじめに
わが身をつらぬく
鉄の矛を
愛さなければならない
凍った川のほとりで
手負いの鴨が腐った桃をついばむ

明日は南にくだって
詩人の家のモザイクの
飼い犬を見に行くんだ
野鴨の行く末を案じつつ
CAVE CANEM

226 : ◆TPDxMezcT2 :2006/03/17(金) 11:25:37 ID:tXMTxr8R
芸術と無縁な頭だと、ようやく気付いたのです。花よりハーゲンダッツ。
月面で宇宙に向ってドーンと押されると、独力では戻って来れぬと聞く。
いまさらやめるわけにゆかず。誰がこの背を押したのだろうか……

227 ::2006/03/20(月) 23:57:41 ID:wm7Oj4fu
…春ですね。アイスも美味しいけど、花も美しいですよ。

228 : ◆TPDxMezcT2 :2006/03/23(木) 00:50:10 ID:axXtjNHo
今晩は。
はい、本命は花のはずです。
近頃、ようやく綺麗だな、という目で
植物を眺めることが出来るようになった気がします。
昔から数々の花々の名前を耳にして来ましたが、
今となってはさっぱり思い出せません。
ですが、今後、西へ東へうろうろし、土に触れたりして、
そうした記憶のアナボコを埋めて行こうと画策しています。
で、手始めに桜かな。アイスもいいけど桜餅もおいしいです。
東西で、結構違う物らしいですが。あの匂いが好きですね。
長々とすみません。

229 : ◆TPDxMezcT2 :2006/04/09(日) 01:03:05 ID:loD2yiv0
もう署名の意義を感じない。

230 :毒麦:2006/04/09(日) 01:03:47 ID:loD2yiv0
晩秋の野原を踏みあるいた足で
春のアパートに帰りたい
知らない丘の日暮れに
小石の影も長くなるだろう
永遠の物質の凋落を
背中に感じて歩きたい
不死のものはどこかへ
おいてきてしまった
人間はそれを取りに戻るだけだ
めいめい国の女の髪に花をかざって
涯しない夕陽と畑
のなかをあるこう
蛇の穴のなかの
水晶をさがしに。
あらゆる言語は
麻酔薬にすぎない
覚醒の痛み

恐れる罹患者の
永劫の夢をやわらげる
一粒の麦は
夢の栄養だ
体によくない
こんなに長い影
一つの石
一粒の麦も
寄木の棺桶のなかで見る夢だ
イタリアの女性は
ひなぎくの花だけを残した

231 :旅路1/2:2006/04/13(木) 21:10:51 ID:BHQZUlOQ
古い舞台を掃除しながら
壁にかける絵画のことを思うのだ
麻糸とブラスの板でできた
オブジェをおく机を磨きながら
言葉を発さないのは
君とのロマンスをこれ以上
考えないことだ
愛に節度を持たせたくない
ロマンスの彼方には
悲痛な面持ちの肖像がある
終幕にちかづくと
Demonがあらわれるのだ
Demonの訪れは予想できない
宗教を違えていても
あらわれることが
あるからだ
苦悶をこらえる男の肖像だ
また墓掘り人を
やとわなければならない
Arlequinのように
ぶら下がってくるDemon
の綱を切りたい

232 :旅路2/2:2006/04/13(木) 21:11:36 ID:BHQZUlOQ
遠くなる背中
無限に小さくなるシルエットを
感じ続けるのは
虚しいことだ
人はこの舞台の果てへ
ただ歩くだけだ
桜木の下を散歩して
目礼を交わすだけですまないのは
悪魔のかけた魔法だ
黄色い水仙は
地獄を周遊する精霊のあしあとだ
そう知らなければ
この川のむこうではやっていけないよ
もうロマンスを演じたくない
舞台上の未来は
過去と同じくらい明るい
ふたつの木の実の差異を愛したい
絵画のなかにある絵画を
悪魔の言語を知らない
えごのきの芽を
飾りたいと思った

233 : ◆USgE9QYRzI :2006/04/16(日) 02:04:02 ID:u2Dq1kHk
夜の随想

神さまが夜をあけてくださりゃ、またいいこともあるでしょう
とサンチョが言った

眠るがよいぞ、サンチョ
とドン・キホーテが応えた

234 : ◆aEIhsf82gY :2006/04/16(日) 02:07:10 ID:u2Dq1kHk
お前は眠るために産まれてきたのだからな
しかし、わたしは寝ずの番をするために産まれてきたのだから、
これから夜が明けるまでの時間、思いを自由に飛翔させて
それを
ちょっとした恋歌のなかに発露させてみせようぞ

235 : ◆taNtKOqPCk :2006/04/16(日) 02:12:04 ID:u2Dq1kHk
おいらの考えじゃ、とサンチョはこたえた
恋歌をつくらせるような物思いというものは
それほど深刻なものであるはずがねえんだ
それはそれとして
お前さまは好きなだけ歌をお作りなさいましよ
おいらは出来るだけ眠るようにするから

こういうとサンチョは必要なだけ、たっぷりと地面を確保すると
そこに横になってうずくまり
安らかなねむりに入った

236 :[・_・] ◆AeFE2JE3nM :2006/04/20(木) 17:51:52 ID:ET2ufYPZ
そうだね ──と率直な詩人もこたえた。

  ぼくはぼくの糞の匂いを嗅ぐだけだ。
  他人の糞なんて、耐えられないね。

なるほど。
そこで、またまた提案なのだが──と[・_・]は言った。
とりあえず「そうだね」という言葉から、レスをはじめる事にしてはどうだろう。
    誰の内面も詮索しないで、ただ機械的に「そうだね」「もっともだ」と言ってみない?
    ↑
(この「誰」という言葉には、自分自身も含まれる)

237 :名前はいらない:2006/04/21(金) 00:36:39 ID:54L+K6NR
そうだね
ただ同じ言葉を繰り返しても別に悪いことではない
けっして命令がましくはないセラピストみたいに振る舞まうことは
単純なプログラムにだって出来る
簡単な仕事のようだし

238 : ◆TPDxMezcT2 :2006/04/22(土) 00:05:35 ID:1T9ZrPrq
ageもsageもご自由にしていただければと思います。あまり私が何か言うのも変ですが、
>>1で余計なことを定めてしまったがゆえに。当初気紛れにageたりしましたが、
途中から引っ込み思案にsageはじめたのは何故だったかな。
パルケ・エスパーニャに行った記憶が。

239 : ◆TPDxMezcT2 :2006/04/22(土) 00:06:49 ID:1T9ZrPrq
皆で使おう、ということです。たんに私はsageを好むと言うだけでした。

240 :経文1/2:2006/04/22(土) 00:09:31 ID:1T9ZrPrq
春の朝はまた晴れた
また不安が襲ったが
そのことを日記に書けない
日記を読み返す度に
感傷のうき目に遭いたくない
僕の行く先に付きまとって
僕とともに死なない
唯一なものだ
人間の運命を離れて生き続ける
無数の運命だ
悲運の集合が象徴を形づくって
太陽のかげに隠れている
月面を介した
水銀のような視線を
猫のように追い払えないが
また夜明けが近づいている
あんまり眩しい
不幸のシンボルが
のぼってくる
とうとう水仙が枯れた
生かしたり殺したり
するのは人間だけでもない
水仙も咲いたり
つぼみをつけなかったり
太陽をこばむだろう
幾つも禁忌を重ねて
深い地獄に落ちるだろう
しかしこのパラドクスに
比べればどうということもないよ
咲かせては枯らすだろう

241 :経文2/2:2006/04/22(土) 00:10:27 ID:1T9ZrPrq
この
不安のしたたりのなかにも
永遠はない
はてしなく遅く
死のうとしているだけだ
このような自由は
望むべくもないよ



晴れたので午後は
傘をかわかしていたが
あまり慣れなかった
アオギみる事が出来ない……
限りなく
死に近い生だ
生命の異常を感じていたくない
この光りのなかで
一足早く燃え尽きようと
しているのだ
この光りを受けて
肌が黒くなる
人間が永遠に消え去るまで
見まもってくれる最後の光りだ
そしてうす明るい日暮れのなかを
歩いて帰った
経文のごときかえるの声が
きこえそうに
暑かった家路をいそいだ

242 :夜会:2006/04/22(土) 00:11:26 ID:1T9ZrPrq
誰も
酒を飲める者はいなかった
道徳が邪魔した
法律がじゃました
恋愛がじゃました
クルミばかり幾つも割って
その宴は硬い山と椎のテーブルの陰に
永遠にかくれた



朝か昼だけに
花を開く植物があるという。
幾度も繰り返すから
早くしおれるのだと
思っていたが、
蕾がつくことこそ
滅びへの道ならば、
僕は写真を撮って満足してしまおう、
そして、永遠にそれを忘れ去るだろう。

243 ::2006/04/28(金) 22:54:06 ID:U1tk3vED
菜の花の季節ですね。

※スレッドが700番を超えたので、ちょっと危険領域ですね。
  近々、一度上昇させた方が良さそうですよぅ。

244 : ◆TPDxMezcT2 :2006/04/29(土) 01:02:03 ID:t/LhbOel
>243
ご忠告ありがとうございます。
お気にかけていただいて、すみません。そうでしょうか。
書き込みがあると案外消えないものだと思うのですが、
やはり700を越えると問答無用に削除となるのでしょうか。
研究不熱心で申し訳ありません。と言うわけで、近々、明日にでもageてみましょうか。
NHKふうに言えば、大型連休の到来により、暇ができましたが故に。
一寸前に菜の花が咲いてるのをみましたけど、今が全盛期ということでしょうか。

245 :監獄1/2:2006/04/29(土) 01:03:13 ID:t/LhbOel
Angieよいかに
君の感ずる現実を示しても
雨後の路面のように
その眼球には青空がうつるだけだ
線路の脇の林に
ウグイスが鳴いている。
帰るべき現実を
見失わないことだ
磨かれたシンクに残る水滴の
なかを通ってくる光りのように
やがてまた雨が降り始めて
眠りを誘うだろう
クスノキの葉も降ってくる
パリの監獄の暗闇から
立派な髭の紳士が
こちらをのぞいている。

246 :監獄2/2:2006/04/29(土) 01:03:50 ID:t/LhbOel
彼も囚人だ
死んだ版画家が
彼の罪状を知っている
ブレイクのペン画のような
版画だ
山奥ではカエデの青い葉が
無数に茂っているだろう
もう薔薇も
咲いているかもしれない
君の肛門のような……
割れた鏡のなかから
正しい破片を探さなければ
ならない君の負い目だ
正しい裂け目に帰って酩酊せよ
鋭い視線を感じ続けよ
さもなくば刑期を
満了しえない
この雨も
人間まで洗い流さない
噴水で遊んだことも
あったと思う
現実のなかで
確かに魂は燃えている
ちょっとした言葉づかいが
この部屋を明滅さすのだ
この部屋のなかを。

247 :名前はいらない:2006/04/29(土) 01:14:59 ID:t/LhbOel
やっぱり今やっとこ。鉄は熱い内に。失礼します。

248 :松明:2006/05/01(月) 15:39:31 ID:2ZItZlVC
この坂をくだって
ナンテンの赤い封蝋をくだいて
また夏が帰ってきた
長い手紙のように
いくばくかの雨滴にぬれて
あけびの話を
しきりにしゃべった
ムラサキの実と花が
松明のかげで見る桜のように
うら悲しく思われて
自裁の願望がにわかに
想起されるのだと
まだ四月の川縁のお茶屋で
揺れる柳を並んで見たが
どんな幸福もこの長椅子のように
人間のものに過ぎないと思うと
淋しくて人間的感動のなかに
身を投げたいとも思うよ
蓬餅を幾つかつまんで
日が暮れないうちに別れた
紫のアヤメを発見したら
それから夏が始まるのだ

249 : ◆TPDxMezcT2 :2006/05/01(月) 15:41:58 ID:2ZItZlVC
漸く4分の1を消費したということですね。

250 :神代1/2:2006/05/15(月) 03:07:16 ID:WjNmrLlf
幸福とは何か考えているうちに
幸福を感ずる能力がなくなる
考えることと感ずることは
やはりどこか違っている
しかし両者を峻別できない
ギリシアでは
同じ川の流れに
神も人もその身を清めたであろう。
しかしまた幸福が呼んでいる


死と生が混乱するいま
どんな悲しい話も
涙するにたりない
人間という存在の中で
悲劇が反響しているにすぎない
でも排ガスで
すっかりしおれた草花も
あるにちがいない
痩せた軍隊のように佇む
立ち枯れした街路樹を見て思うのだ
旅から帰って
古いフレーズを探しあてなければ
 ならない
葉を落としきった男たちが
なんとなくこっちを見ている

251 :神代2/2:2006/05/15(月) 03:08:28 ID:WjNmrLlf


悲劇ばかりでなく
もうどんな祈りも挨拶も
あらゆる言語にも愛想を尽かして
青い顔をした人が窓辺に立っている。
こんな時にふと思うのだ
人間の中に戻って来て……
水をかぶったトーストパンが
床の上で干からびて
女は片足が裸足であった。
大いなる殺戮も人間を殺しただけだ
キリスト教が分かれた時
ある方は中国へ去り
中世の異端や魔女だって
まだ生きているかもしれず
父の額を割って生れた
女神も

畢竟神との
永遠との
幸福との関係を相対化してるにすぎない
近頃
多くの人が路頭に迷っているという。
路上には夜毎星が出るし朝焼けも見られる
彼らは昼となく夜となくさまよう
歌の一節に感銘を受ける時
それはまさしく過去において歌われたもので
 あった
この平坦な道の上で
永遠に踏み迷うのであろう。
女の埃っぽい頬

252 : ◆TPDxMezcT2 :2006/05/15(月) 03:09:47 ID:WjNmrLlf
テスト、テスト

253 : ◆t9HhWA04T. :2006/05/15(月) 03:11:51 ID:WjNmrLlf
まあこんな感じで良いトリップ探しつつあります。

254 :薔薇 ◆TPDxMezcT2 :2006/05/18(木) 23:08:32 ID:fYLKV23N
わずかの逡巡もなく
僕の元から去る人を、
止める術はない、
彼女のゆき先の
見当をつけるだけだ
黄金色の朝陽が
乾霧に浸りきらぬうちに。
彼女はどこかへ帰るのだ、
僕という存在の外部へ
去ろうとするのだ
外からの声は聴えない
人間の存在は巨大な円
僕のごとき 矮小なる存在の集積
一個の薔薇状果
花托の陰をさまよう
幻影の
ダンの
ダンテの
少女
永遠に充ちる薔薇の木
もはや何も聴えない
恋愛の思い出
思い出は永遠の……
オーかの暗い森で解いた髪を
どうしているのか今
聖人の呼吸のごとくに乱れて
消える


聴け、おのれの存在の涯に
別離の瞬間に
初めて響く声があるにちがいない。

255 :名前はいらない:2006/05/18(木) 23:10:10 ID:fYLKV23N
着けると変なのだけど、やっぱり着けよっ。どうでもいいですね。

256 :夏の水田 ◆TPDxMezcT2 :2006/05/26(金) 22:57:03 ID:ZV1XpqcH
春のおわりの風にさざめく
くすのきの葉が
絶え間なく落ちてきて
町の陰につもった
すべての理想は失墜した
人々が石炭のように
役所のなかで燻っている
農夫がいつの間にか田に水を引いて
アメンボウが木陰の方へ滑った
その方向に夏のおわりが待っている
ささやかな波が生れては消える
この曲線をなぞる光りが
かすかな音を立てて
アヤメの咲く畦にいる
聞き耳を立てる者の
脳髄を湿そうとする
断続的な細波の消失は
人類の希望にすぎない
田の底のように
ひび割れた土壌の
それでも体内を駆け巡って
涙となって出てくる

257 :君の名は ◆TPDxMezcT2 :2006/06/07(水) 15:07:45 ID:vIDeHdiA
君は
眠っているものを知らずに済んだ
たった数日の間叫喚するために
何年も待ち続ける蝉を体現した
それでも
君は生れてからの方が長かった
人類としての
生命が短かったに
すぎなかった
ヒグラシの鳴き声と
蘇芳色の夕陽が
はいって来る!
ついに君は
ウツセミのようになってしまった!
百合の根のような成虫をひり出した
玉葱の皮のごとき!
しかし
あまりこのような悲惨を考えても
仕方がない
眠りにつくものを
君はついぞ知らなかった
ああ
目覚める可能性の
ないものを
いつくしむことは出来ない
その可能性そのものが
愛情の直接な対象に
なるからである
その可能性を
危惧する場合に
おいてもである

258 :(つづき) ◆TPDxMezcT2 :2006/06/07(水) 15:08:31 ID:vIDeHdiA
君の死について
人々は悲しむことしか出来ない!
秋に続く小路をはずれて
まだ青いススキの草むらに分け入り
宝石を投げ込んだ
川面をながめれば
オルフェウスの死相が
浮かんで
くる

259 :リーフレイン:2006/06/07(水) 21:36:38 ID:UbtaNWyE
突然失礼いたします。
実は、詩板本 2冊目 というスレッドにて、2005年に投稿された詩作品から
同人誌本を作ろうという企画を開催しております。
大変恐縮ですが、sarasen氏の 秋雨 を掲載させていただきたく。
掲載許可をいただけないでしょうか?
本は、7月2日の東京ポエケットにて配付の予定をしております。印刷部数は100部のみで、
利益は発生しません。(売価500円の予定) 6月14日までにお返事をいただけると幸いです。


260 : ◆TPDxMezcT2 :2006/06/08(木) 01:03:07 ID:77g1Okmz
初めまして、ご連絡ありがとうございます。
お急ぎの模様ですので、この場で即断するという形になりますが、
わたくしは、謹んで辞退申し上げます。
四名の方々から、ご指名いただきまして、
既に、たいへんな栄誉に浴しているものと思われ、
わたくしには、それ以上のことは望むべくもありません。
ご好意を無下にしたいわけではありません。
ご理解いただきたいと存じ上げます。
編集長というものは、重大な役目であると窺われますが、
無事刊行に至りますことを、陰ながら応援させていただきます。
ありがとうございました。

261 ::2006/06/08(木) 22:47:45 ID:ve+ghb4R
…ちょっと残念だな。
でもsaracenさんらしい、とも思ったり。

雨の季節が来ますね。

262 :リーフ携帯:2006/06/08(木) 23:06:34 ID:TawCvMhu
お返事ありがとうございます
了解いたしました。
いつもこちらで楽しませていただいております。
ありがとうございます。

263 :名前はいらない:2006/06/14(水) 19:36:42 ID:dcrx0n/h
地下スレ撲滅運動の会

264 : ◆TPDxMezcT2 :2006/06/16(金) 21:26:03 ID:KLhNrQTs
>261
ご指名くださってありがとうございました。
私には、それで十分だと思いました。まったく、近頃、
じめじめして困ってしまいますね。アジサイが咲いてますが。
>262
こんばんは、遅くなりましてすみませんでした。
あまり僕は詩がわからないので、そんな者の物を載せていただくわけには、
ゆかないなと思った次第です。ただ、今後とも、細々と続けていくつもりです。
宜しくお願いいたします。
>263
近頃は、とくに、「地下スレ」だと思ってやっているわけではないのですが、
意味なくsage続ければ、結果的に同じになりますよね。すいません。
別に、ageてもらおうが、sageてもらおうが、私はどちらでもいいのですが。

265 :無明 ◆TPDxMezcT2 :2006/06/24(土) 03:44:18 ID:4yjxV9Y0
ただ
名状しがたい
雪洞の陰の
ふやけた蛾のような
一際濃い闇の
作るはてしなく
暗い影の
女を
まぶたを閉じると
後姿がうつっている。
潤む眼球の
硬度さえ知っているのに
薄茶色の有色人種の筈の
ダイアモンドリングの
ゆらめく火の輪郭の
薄暗さだけが
この眼にうつっている。
落葉の下の
神の手のいちいの実の
劫罰というしか
なかった。
濡れた石の下の
虫や蛙のように
暗い階段をゆっくり下っていく
あらゆる所へ繋がる
楽園を出る道
蛇に脅かされた男女と違って
林檎園を見たのは
罪人としてであった。
ただ
雲を払い
一夜の月を献ず

266 :◆TPDxMezcT2 :2006/06/30(金) 22:16:03 ID:oEBAxdLg
太陽がなぜか
この空に帰ってくるように
苦しみもまた帰ってくる
あらゆる建築は
悲しみを癒すための
庇をつけて
遠方のバルコニーが
透明にゆがんでいる
温泉でなく
マーブルのゆかしい噴水が
プラタナスの陰で
はてしなく湧き立っている

万物は流転す
その神妙なサイクルは
自然の場合には
経過が緩慢なだけだ
樹の陰から
縁からあふれる水を
呆然と
見ている!
それでも
人類の緩慢な生殖への夢も
永遠にかなわなく
なった

267 :記憶 ◆TPDxMezcT2 :2006/07/22(土) 03:28:17 ID:RxyTVyp2
水のなかで遠くの魚を見て
急に顔をあげると
睫毛に付いた水滴をとおって
太陽がきらめいた
このあおだいしょうのごとき
せせらぎの行く末を思えば
はるかな海につながっている
人々は想像する
紺碧の鏡のおもてを でも
はまなすの実を探すように
海辺には自らの姿を探せない
川底のすなつちに両足を埋めて
股の下の川面をながめても
過去においてきたものは
流れて来ない
積み藁の陰でオカリナをふいた昨日も
この先にはない
記憶が流されていく
本当の川の姿が見たい
ささやかな口づけのひとつも
もはや人間の視覚の及ばないところに
 ある
人類の過去だけが
永遠のほうへ流れていく
そしてふたたび太陽がきらめく
ただ銀色の横笛はなんどでも吹けると

268 : ◆TPDxMezcT2 :2006/07/22(土) 03:29:31 ID:RxyTVyp2
ageてみましたが、特に意味はありません。
同時に、sageて来たのも、特に意味はなかったのでした。

269 :名前はいらない:2006/07/24(月) 03:18:55 ID:lkJF8iH2
じょうすい

270 :ネル:2006/07/24(月) 03:27:29 ID:6BaSgTOC
気まぐれな電話
あてにして
可愛いベビードール身に纏い
寂しさと喜びを待ってるの
勝手気ままな君を好きになったアタシが悪いのね

夢の中の
君の大事なものを奪い取るわ
アタシだけ玩具にしてあげる
朱い果実を頬張って
笑顔で差し延べるの
『もう 離さない』と
泣きながら哀願する君に
氷のような眼差しを渡してあげましょう
不幸にしてあげたいから
おやすみ
愛しいダーリン
悪夢の魔法をかけてあげたからね


271 :(-ω-)類 ◆Z/RUI/OFiY :2006/08/15(火) 21:52:05 ID:Isom5R7E
どうにもならない

大きな
大きな

影の中の

小さな
小さな

声の主

雲は切れ
弱々しい光に
照らされる

272 : ◆TPDxMezcT2 :2006/08/18(金) 03:49:02 ID:qy0OAZnZ
>270
どうも初めまして。書き込みありがとうございます。愛憎は紙一重という事でしょうか。
相反する意味合いの言葉を組み合わせて、そんな雰囲気を創り出しておられますね。
>271
どうも初めまして。この閉鎖的なスレッドに投稿くださいまして、ありがとうございます。
これは矢張り、ageの効果が出ているのでしょうか。
この宇宙の大半を占めるのは闇であるそうです。そんな弱々しさが、醸されてる。
でも、却って、そんな微光がこの詩の中では、際立っているようにも思えます。

因みに、私はこうして感想文を書いているわけですが、むろんのこと、どなたでも、
感想や評価の類を、お好きなように、なさっていただきたいと思います。
すると、他の色々のスレッドと、役割が重複してしまいそうではありますが。

273 :すいれん ◆TPDxMezcT2 :2006/08/18(金) 03:50:06 ID:qy0OAZnZ
陶製の水盤に残る
泥の中の蓮の
未来の生命を
考えるのは旅人である
土地の女は日傘を差しながら
午後の畦道を行く
葡萄の房の
垂れ下がる
かごを提げてる
描き忘れられた影のように
思考が足りない
対になって充たされるのは
被造物の宿命であるか
遠ざかる女の足元に影がない
来年はこの田にも
赤いすいれんが咲かない

274 :(ノ・д・)ノ類#CセK.A8'セ:2006/09/01(金) 01:22:14 ID:6VyXu9nW
>>272
これはドモご丁寧に、、、
ツマラナイモノですが

        ダンゴ
(´・ω・)つ―●◎○

シガラ最近地下スレを巡ってるので、
またくるやもしれませんス

デハデハ

275 :(ノ∀`)類 ◆.eRUIXXXv. :2006/09/01(金) 21:31:59 ID:6VyXu9nW
酉を割っちゃっても気にしないぞっ☆













正直ゴメン。

276 :名前はいらない:2006/09/15(金) 01:10:16 ID:v/6oXKQM
とおじも

277 : ◆TPDxMezcT2 :2006/10/15(日) 02:02:08 ID:L1bqxzpr
すみません、長い事来ませんで、お団子をありがとうございます。大変硬くなっている。
地下スレを巡る事は楽しそうですね。いま、700以上のスレッドが、詩板にはあるのですね。
新しいトリップが見つかってよかった。こんな調子でたいへん申し訳ありません。

278 : ◆TPDxMezcT2 :2006/10/15(日) 02:05:51 ID:L1bqxzpr
で、懲りずに書き残して行こうと思います。もはや詩を作るのを習性として。
私の書くものが詩であるかどうかは、私の信念に関わる事です。
そして、私の信念が三流である以上、私の書くものも、三流であります。
しかし、詩である事は譲れないのかな。詩でない可能性は多分にあるはず。
たとえば、スクランブルエッグを出して、「これはオムレツである」と言うがごとく。
とりあえず、「もう書くな」と言う事になれば、もう書かないという準備だけは整っています。

279 :深い海へ1/2 ◆TPDxMezcT2 :2006/10/15(日) 02:07:38 ID:L1bqxzpr
私が溺れた後、
陽の光りはまだ、
青ざめた皮膚を
血液のかわりに
暖かくしていた。
私の霊魂は
テントの立ち並ぶ海浜を越えて、
窓辺にまどろんでいる君の
顔をながめに行った、
それは昼めしの後であった。
青い軽やかな、
無数の波が、
私の髪を弄ぶ、
透明な海流が私の体を
深海へ押しやろうとする。
慈愛に満ちる太陽が、
私のもとから
本当に去ろうとするのを
感じたのは初めてであった。
いまや琥珀の一かけらとなった太陽を、
三流のペスィミスムのような
薄暗い波が、
さんざんになめつくし、
私の頬に影を落とす。
夜が来る。

280 :深い海へ2/2 ◆TPDxMezcT2 :2006/10/15(日) 02:08:26 ID:L1bqxzpr

 肉体は霊魂とともに沈潜する
 グラスを振ると
 何も聴こえない
 かろうじて液体の入っていた事が
 こびり付いたしみによってわかる

なめてみたら塩からい。
偉大なる伝説をささやき給え。
もう海は消えてなくなった。
浜に残るカキシブの如き色彩
取り残された魚が、
燦燦たる太陽を見詰めて、
跳ねるのをやめた。
オー人類の神よ、
新たなる伝説を、
彼の耳にささやき給え。
愛しい海水は、
あまり地中深くまで
滲み込んでしまった。
それは次なる時代の
新たなる不安の
根源となろう。

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